日医ニュース
日医ニュース目次 第1081号(平成18年9月20日)

日本医師会特別市民公開講座
自然災害への対応と大規模感染症について

日本医師会特別市民公開講座/自然災害への対応と大規模感染症について(写真) 日本医師会特別市民公開講座が,世界医師会(WMA)の後援により,九月十日,日医会館大講堂で開催された.今回の公開講座は同時期に日本で開催された「第一回WMAアジア―大洋州地域会議」に合わせて開催されたもので,六百三十名の参加者があり,大変盛況であった.
 冒頭あいさつした唐澤人会長は,「今回の市民公開講座が,災害や感染症に対して,日ごろからどのような準備が必要であり,実際それらに直面したときにどのように対処すべきかを考えるよい機会になればと期待している」と述べ,公開講座開催の意義を強調した.
 つづいてあいさつに立ったレトラッペWMA会長は,「災害や感染症を効果的に抑制するためには,各国間の積極的かつ十分な協力が必要」とし,「今回の会議で率直な意見交換を行って,互いが提案するものを認め合うパートナーシップを形成したい」と述べた.
 一方,ブレイシャーWMA理事会議長は,自然災害が及ぼす健康被害の予防と対策のためにはネットワークを形成し,アイデアや経験を共有することが重要と指摘.今回の会議でも積極的なアイデアが生まれることに期待感を示した.
 当日は,引き続き講演二題(一)「感染症の危機管理─SARSの経験に学び,新型インフルエンザに備える」(葛西健WHO西太平洋地域事務局感染症対策統括官),(二)「災害への備えと災害時の対策」(山本保博日医大救急医学主任教授)が行われた.
 (一)では,葛西氏がまず,SARSが世界的に流行した当時の模様を自身の経験を基に解説.SARS拡大の最大の要因は,極端に多くの二次感染を引き起こした一部の感染者を各国が見逃したことにあると分析した.
 また,現在は新型インフルエンザが,いつ出現してもおかしくない状況にあるとし,各地域で可能な限りの準備をして欲しいと要望した.
 (二)では,山本氏が近い将来,東海地震など大地震が発生すると言われているなかで,阪神・淡路大震災以後,わが国では救急・災害医療の重要性が高まってきていると説明.今後の課題としては,(1)避難所に行かない,あるいは行くことのできない残留避難民への対応(2)大災害後の避難所における感染症の発生・拡大の防止─等が挙げられるとした.
 さらに,「国民一人ひとりが『地域の命は地域で守る』という意識をもって最悪の事態に備えて欲しい」と呼び掛けた.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.