日医ニュース
日医ニュース目次 第1084号(平成18年11月5日)

世界医師会(WMA)ピラネスバーグ総会
─日医提出の北朝鮮の核実験反対決議が採択される─

世界医師会(WMA)ピラネスバーグ総会/─日医提出の北朝鮮の核実験反対決議が採択される─(写真) 世界医師会(WMA)総会が,十月十一日から十四日まで,南アフリカ共和国ピラネスバーグのサンシティで開催された.日医からは,宝住与一・岩砂和雄両副会長,飯沼雅朗・石井正三両常任理事,畔柳達雄参与が参加した.
 総会は,十一日に医の倫理,財務企画,社会医学の各委員会,十二日に準会員会議と学術集会,十三日に理事会と総会式典,十四日に総会全体会議が行われた.参加医師会数は四十三医師会で,出席人数は約二百五十名であった.
 新しいWMA役員には,新会長としてマレーシアのアルムガム氏が就任した.また,次期会長には,アイスランド医師会のスネーデル氏が投票により選出された.また,十二日の学術集会では,「医療への投資」がテーマに取り上げられ,宝住副会長が「日本の医療制度の現況と将来像」と題して講演し,医療の投資効果について概説した.(写真下
 総会での議決事項の概要は,以下のとおりである.
世界医師会(WMA)ピラネスバーグ総会/─日医提出の北朝鮮の核実験反対決議が採択される─(写真) (一)「北朝鮮による核実験に関するWMA決議」(日医提出)の採択
(二)医の倫理関係
(1)「医の国際倫理綱領」の改訂を含む十三件のテーマに関する既存の声明等の改訂,統合が行われた.
(2)このほか,「HIV/AIDS撲滅に関する決議」が採択された.
(三)社会医学関係
(1)「医学教育に関する声明」をはじめ,十一件のテーマに関する既存の声明等の改訂,統合が行われた.
(2)このほか,「旅客機飛行中の医療補助に関する決議」等三件の決議,声明が採択された.
(四)財務企画関係
(1)二〇〇七年コペンハーゲン総会の学術集会のテーマを「Information Technology in Health Care」とする.
(2)二〇〇七年以降の総会主催国は,次のとおりとなった.
 二〇〇七年:デンマーク
 二〇〇八年:韓国
 二〇〇九年:インド
 二〇一〇年:カナダ
(3)新規加盟医師会は,サモア,ナミビア,ソマリア(加盟医師会数は八十八となる)
(五)準会員会議
 議題の提案者が欠席のため,すべて次回コペンハーゲン総会時まで延期となった.議題は七件あり,このなかには,旧日本軍の七三一部隊に関して,日医を非難する内容の決議案が含まれている.
(六)中国での囚人からの臓器提供について
 WMAは中国医師会との連絡を継続し,WMAの代表者が同医師会と二〇〇七年五月の中間理事会前に,医の倫理を中心とした話し合いの場を持つこととなった.
(七)ボリビアにおける医師の流入について
 ボリビア共和国において,キューバからの医師の流入により,ボリビアの医師・医療が受けている被害について,理事会決議が採択された.
 以上のほか,WHO事務局長候補者・尾身茂氏の支援について,日医代表が南アフリカ共和国の科学技術大臣,北西州知事,保健省高官,ならびにレソトからのWMA代表者等合計八名と面会し,協力を申し入れた.
 また,日医発行のJMAジャーナルについて,今後,WMAジャーナル(WMJ)と内容の連携を図ることでWMA事務総長と合意し,これについては,AMA(アメリカ医師会)もサポートすることとなった.なお,総会開催中に,アメリカ,イスラエル,ドイツ,カナダの各医師会と個別に懇談する場を持った.

平成18年10月11日

声  明

北朝鮮の「地下核実験」実施の発表に断固抗議する

日本医師会長 唐澤 


 北朝鮮は10月9日,地下核実験の実施を発表した.唯一の原爆被爆国である日本国民の命と健康を守る専門家集団として,日本医師会は断固抗議する.
 日本医師会は,すべての人々の保健レベルの向上に努めながら人類に奉仕することを第一の使命としている医師の学術団体である.私達は広島,長崎の原爆被爆経験から核兵器,核実験による放射能の人体へ及ぼす計り知れない深刻な影響を,どの国の医師よりも強く認識するものである.
 過去にインド,パキスタンが地下核実験を強行した際にも,両国駐日大使および両国医師会に抗議したとおり,日本医師会は如何なる政治的理由があろうと,人類の存亡に直接関わるすべての核実験の廃止およびすべての核兵器の廃絶を強く求めるものである.
 なお,切実な問題として地下核実験による放射能漏れによる水質,大気汚染,さらには海産物,農産物への影響が懸念されるが,わが国は勿論,北朝鮮近隣諸国に対し,これら安全に関する情報提供が速やかに行われることを望むものである.


 北朝鮮が,10月9日,地下核実験の実施を発表したことを受けて,日医は,10月11日,唐澤人会長名で上記の声明を発表した.声明では,唯一の原爆被爆国である日本国民の命と健康を守る専門家集団として,核実験に断固抗議する姿勢を示した.

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