日医ニュース
日医ニュース目次 第1087号(平成18年12月20日)

プリズム

「徳と法」

 「徳」という言葉がある.その意味を調べてみると,「道を悟った立派な行為」と書いてあるが,同時に「人を感化する人格の力」ともある.一方,「法」とは,「社会秩序維持のための規範で,一般に国家権力による強制を伴うもの」とある.
 より良い社会を構築していく上で,「法」は必要不可欠であるが,さまざまな価値観や選択を排除することにもつながる.そこで,その運用に柔軟性が求められたりもする.
 昨今の社会情勢を見るにつけ,「法」の運用がかなり厳しく執り行われているように見受けられる.医療を取り巻く環境も例外ではない.一つの事象に対する多面的な要素を制限している部分がないかと疑問を感じる.
 さらに,新しい価値観や方向性を示そうとする時,国家によって「法」の規制をかけることが手っ取り早い方法であるが,あまりに急速な変化を求めることは,それに取り残された人々を切り捨てることにもつながりかねない.運用面の柔軟性だけでは不十分である.
 問題は,意識や慣習であり,それを導く手段として「徳」を忘れていないかということを,今一度考えなければならない.児童の虐待や自殺の問題についても,「徳育」が重要になると考えられる.
 国家は,「法」のみではなく,「徳」を持って国民を「導き」,国を「治め」てもらいたいものである.

(T)

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.