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第1104号(平成19年9月5日) |
ストレス障害
日本の国技と称される大相撲.その頂点にある横綱の病気が,これほど話題になったことがあるだろうか.
事の始まりは朝青龍がケガを理由に夏巡業を欠席し,親方も知らないうちにモンゴルに帰り,本来ならば,できるはずのないサッカーをしていたことが映像で流れてしまったことにある.夏巡業を楽しみにしていたファンを裏切る行為ということで,一斉に非難の嵐に見舞われることになった.
事の顛末はともかく,問題は肝心の横綱本人がどう考えているのか,まったく見えてこなかったことにある.
横綱としての在り方の問題から,「ストレス障害」(後日,「解離性障害」)なる病気の方に焦点をすり替えようとしているように思えた.
ある程度のストレスは,だれにでもある.特に,年間の自殺者が九年連続で三万人を超えるという事実からも,現代は超ストレス時代と言えるだろう.
今や,働く人たちのメンタルヘルスは,産業医の重要なテーマの一つである.
ところで,メンタルケアをマネージする側にいるはずの医師のストレスも,だんだん高まる一方ではないだろうか.医療の不確実性を無視したような,患者側の「権利」の増強.増える医療訴訟.反対に,医師の地位,尊敬度の低下.
「骨太の方針二〇〇六」で決まった社会保障費の年間二千二百億円,五年間で一・一兆円の削減.ますます経済的に厳しい状況が予想される.
医師としての在り方が,ストレス障害による問題にすり替わることはないだろうが,医師のメンタルケアはどうしたものか.
(No.8)
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