日医ニュース
日医ニュース目次 第1112号(平成20年1月5日)

平成20年度診療報酬改定の改定率が決定
唐澤会長 全国の医師会の後押しで本体のプラス改定を獲得

 政府は,平成20年度の診療報酬改定における改定率(医科本体で0.42%の引き上げ)を,昨年12月18日に決定した.これを受けて,唐澤人会長は,同日に緊急記者会見を行い,今回の診療報酬改定に対する日医の見解を明らかにした.

平成20年度診療報酬改定の改定率が決定/唐澤会長/全国の医師会の後押しで本体のプラス改定を獲得(写真) 唐澤会長は,まず,診療報酬全体では〇・八二%の引き下げの方向になったことについて,「マイナス改定の流れを押しとどめることができなかったことは非常に残念」との感想を述べた.
 しかしながら,医科本体については,八年ぶりにプラス改定を勝ち取ることができたとし,決して十分とは言えないが,この引き上げによって,勤務医の疲弊,小児医療・産科医療・救急医療の危機が少しでも救われることに期待感を示した.
 また,同会長は,今般の改定率決定に至るまでを振り返って,社会保障費の国庫負担分年二千二百億円の削減が大きな障壁であったと指摘.「経済財政改革の基本方針二〇〇七」には,「機械的に五年間均等に歳出削減を行うことを想定したものではない」と明記されたにもかかわらず,二千二百億円の削減は少しも緩められることがなかったことを改めて批判するとともに,「医療崩壊の危機を認識していただけていないのではないか」と落胆の心情を吐露.来年度以降についても,引き続き理不尽な歳出削減が強いられることのないよう,一層働き掛けを強めていくとした.
 一方で,財源確保の方策として,保険者間の財政調整が行われたことについては,日医がかねてから主張してきたことであり,その第一歩を踏み出したことについては,評価したいと述べた.
 さらに,今回の折衝を行うなかで,日本の医療の実態について,関係各方面と議論できたことは良かったとし,今後も,日医の考える,あるべき医療の姿を各方面に説明していきたいとの考えを示した.
 診療報酬本体のプラス改定を獲得することができた背景については,都道府県医師会,郡市区医師会の強力な後押しが一番の要因と分析.この後押しが,日医の大きな原動力となったとして感謝の意を表明した.
 加えて,自民党国会議員の多大な尽力も忘れてはならないと指摘.診療報酬引き上げに向け,「国民医療を守り危機突破を図る緊急議員連盟」を立ち上げ,三百名近い国会議員の署名を獲得したことは,大きな支えになったと述べた.
 同会長は,また,医科本体がかろうじてプラス改定になったとはいえ,地域医療が厳しい状況にあり,国民が生命の不安におびえていることに変わりはないとし,日医は国民の生命と安全・安心を守る役割を今後も果たしていくとの姿勢を示した.
 質疑応答のなかでは,今回の改定率を了承した理由について,「これまでの度重なるマイナス改定によって,医療現場は疲弊している.そのような状況を考えると,何としてもプラスの改定が必要だった.交渉のなかでは,診療報酬の引き上げは国民の方々にとっては負担増につながるなど,さまざまな要因を勘案し,今回の数字をやむを得ず受け入れることになった.われわれは診療報酬本体の五・七%の引き上げを要求していたが,それは国民の安心を守り,医療の質を確保するためには最低限必要な要求であり,今もこの数字は決して高いものであるとは思っていない」と説明した.
 勤務医と開業医の格差の問題については,医療を受ける患者さんにとっては,勤務医と開業医が協力して医療を提供できる状況をつくることが大事だと考えていると指摘.勤務医の負担を軽減するための財源として,開業医の初再診料を引き下げるとの提案に関しては,「地域の一番身近なところで医療を提供しているのは開業医であり,その収入源である初再診料を引き下げるということは,地域医療を崩壊させることにつながる」と述べ,明確に反対していく考えを示した.
 今後については,「今回の改定率に対しては,さまざまな意見が寄せられると思うが,それらの意見を踏まえたうえで,今後の方向性を執行部内で検討し,中医協での点数配分の議論に臨んでいきたい」とした.
 会見に同席した中川俊男常任理事は,「われわれは,地域医療は危機的な状態にあることを説明し,国に対して特別な財政出動をお願いしてきた.数字的には不十分であるが,その結果,政治判断による診療報酬本体の引き上げにつながった」との考えを示した.
 なお,同常任理事は,当日の会見で,中医協で結論が出ていない検討項目に対する日医の見解を改めて説明した.

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