日医ニュース
日医ニュース目次 第1115号(平成20年2月20日)

緊急記者会見 病院勤務医の負担軽減を優先
診療所再診料の引き下げは阻止

 中医協総会(一月三十日開催)で,公益側の裁定がなされ,病院勤務医対策に当てるための財源に関して,一定の方向性が打ち出された.これを受けて,日医では,同日,竹嶋康弘副会長,鈴木満・中川俊男両常任理事出席のもと,緊急記者会見を開催し,公益側の裁定に対する日医の見解を明らかにした.

正面右から竹嶋副会長,鈴木・中川両常任理事
 平成二十年度の診療報酬改定に向けた議論のなかで,焦点となっていた病院勤務医対策に当てるための財源問題について,一月三十日に開催された中医協総会では,診療・支払両側が,改めてそれぞれの意見を表明.財源捻出のために,診療所の再診料の引き下げを求める支払側に対して,竹嶋副会長は,「再診料まで引き下げられては,日夜を問わず頑張っている医師たちの意欲が損なわれ,地域医療は崩壊しかねない」と述べて,その引き下げに「強く反対する」と主張.両側の意見がまとまらず,議論は平行線をたどった.
 このため,公益側が,「外来管理加算の見直し」「検査判断料の引き下げ」「軽微な処置の初再診料への包括化」「経過措置を設けたうえでのデジタル映像化処理加算の廃止」等を行うことによって,病院勤務医対策に充てるための財源を賄うとする案を提示.診療・支払両側がこの提案を了承したことから,診療側が強く反対する姿勢を示していた診療所の再診料の引き下げは回避されることになった.
 そのほか,当日の総会では,公益側の裁定によって,「二百床未満の病院の再診料の引き上げ」「後期高齢者の初診料の引き上げと再診料の引き下げの見送り」「後期高齢者における病院・診療所の外来管理加算を五十二点に統一」─などが決定した別記事参照
 記者会見した竹嶋副会長は,今回の提案を了承したことについて,(一)一月二十五日の緊急総会において,診療側と支払側の意見の調整ができない場合,最終的には診療側として,公益委員の裁定を尊重すると明言したこと,(二)今回の医科プラス〇・四二%の改定により捻出された財源で,優先的に手を打つべきことは,産科・小児科・病院勤務医対策であると考えていたこと─などをその理由に挙げ,診療所への影響を考えれば,まさに苦渋の選択であったと説明.「今回の措置では,病院勤務医が抱える問題の解決には程遠いかも知れないが,その対策の一助にはなると思う」と述べた.
 その一方で,病院勤務医対策は,診療報酬だけで対応できるものではなく,国が明確な方針を示して,その対策を講じるべきとの考えも示した.
 また,当日の総会で,中医協の土田武史会長(早大商学部教授)が,「平成二十年度の改定が終わった後に,初診料,再診料など医師の基本的技術料の評価のあり方に関する根本的な議論を行い,その結果を今後の改定に反映させる」と明言したことにも言及.この議論を通じて,診療報酬の評価のあるべき姿が明らかになることに期待感を示すとともに,日医としても,そのための議論を徹底的に行っていく意向であると述べた.
 一方,診療所から捻出されることになった財源にかかる部分への今後の対応について,鈴木常任理事は,デジタル映像化処理加算の廃止による激変緩和のための効果的な経過措置のあり方や,分かりやすく,医療機関に過重な負担がかからないような外来管理加算の要件設定について検討していく意向を表明.検査判断料が引き下げられることに関しては,「医師の技術料の事実上の引き下げになることから反対してきた.しかし,これ以上の実施料の引き下げは,受託検査の回避等,地域医療に影響を及ぼしかねないこと,また,病院勤務医対策の財源を捻出しなければならなかったことなどを勘案すれば,受け入れざるを得なかった」と説明.今後は診療科別の調整に重点的に対応していくとした.

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