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第1125号(平成20年7月20日) |
中医協総会
後期高齢者終末期相談支援料を7月1日から一時凍結
中央社会保険医療協議会(会長:遠藤久夫学習院大学経済学部教授)の総会が,六月二十五日,都内で開催され,舛添要一厚生労働大臣から諮問された「後期高齢者終末期相談支援料の凍結」について,やむを得ない措置として了承する旨の答申を取りまとめた.
これにより,後期高齢者終末期相談支援料は,七月一日から一時的に算定が出来なくなった.
後期高齢者終末期相談支援料は,平成二十年度診療報酬改定において,社会保障審議会後期高齢者医療の在り方に関する特別部会が取りまとめた「後期高齢者医療の診療報酬体系の骨子」,ならびに社会保障審議会医療保険部会および医療部会で取りまとめた「平成二十年度診療報酬改定の基本方針」に基づいて議論して欲しい,との舛添大臣の諮問を受け,中医協で議論した結果,後期高齢者に関する診療報酬の一項目として新設されたものである.
具体的には,医師が一般的に認められている医学的知見に基づき,回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者に対して,患者の同意を得て,医師,看護師,その他の医療関係職種が共同して,患者およびその家族等と,終末期における診療方針等に関して十分に話し合い,その内容を文書等により提供した場合に,二百点が算定出来ることになっていた.
この点数項目に関して,一部のマスコミや与野党の国会議員から,「後期高齢者の延命治療に係る医療費を抑制しようとするものだ」「患者に意思決定を強いるものだ」「本人が望んでいない医療が提供されてしまう」などといった批判が続出.
これらの批判を受け,政府与党は,後期高齢者医療制度の改善策に関する検討を行い,六月十二日に,その改善策として「高齢者医療の円滑な運営のための負担の軽減等について」を決定.そのなかに,「診療報酬における終末期相談支援料については,当面凍結することを含め,取り扱いについて中医協で議論を行い,速やかに必要な措置をとるとともに,検証する」との考えを盛り込んだ.
これを受けて,舛添大臣は,六月二十五日に開催された中医協総会に,後期高齢者終末期相談支援料の凍結を諮問.総会に出席した舛添大臣は,まず,「終末期相談支援料については,国民に対する周知徹底不足もあり,国会やマスコミなどから多くの批判をいただいた.終末期医療の重要性については理解しているが,さらに良い方向にもっていくためにも,一時的に凍結させて欲しい」と要望.そのうえで,舛添大臣は,いったん凍結した後に,対象を全国民に広げるため,国民的な議論を行う考えを示した.
藤原淳常任理事が,今回の措置はあくまでも凍結であって,廃止まで踏み込んだものなのか確認を求めたことに対しては,事務局から「算定が一時的に出来なくなるという意味であり,中身の検証,国民に対する広報の徹底の後には再開したい」との回答が示された.加えて,舛添大臣も,「廃止されてしまうことで,終末期医療について国民全体で議論することさえ出来ない状況になることを一番恐れていた.そうならないためにも,一時的に凍結することを考えた」と述べた.
一方,支払側からは,現場での運用状況を調査・検証したうえで見直しを行うという,中医協のルールを逸脱した今回の諮問内容が,悪しき前例になることへの懸念が示された.これに対して,舛添大臣は,「批判は,もっともなことであるが,参議院で後期高齢者医療制度の廃止法案が可決されるなど,昨今の政治状況を考えれば,諮問せざるを得なかった」と述べて理解を求めるとともに,あくまでも今回の措置は,異例であることを強調した.
その後の議論では,竹嶋康弘副会長が,舛添大臣の「国民的な議論を行いたい」との意向に賛意を表明するとともに,政治が国民に理解されるように,しっかり責任を果して欲しいと要請し,最終的には,今回の措置はやむを得ないものとすることで診療・支払両側の意見が一致,諮問を了承することとなった.
答申では,後期高齢者終末期相談支援料の趣旨・内容が国民に十分周知されず,国民に誤解と不安を与え,その結果として,算定凍結の措置を講ずるに至ったことは,誠に遺憾であるとの考えを表明.また,今回の措置は,特別な事情に基づき実施されるものであって,確固としたエビデンスと検証を踏まえて十分に議論したうえで対応するという,これまでの診療報酬改定の基本的な考え方を変更するものではないことを確認している.
さらに,終末期における情報提供と相談支援に関する実態について,情報収集や検証等を早急に行い,その結果を踏まえ,算定の再開を含めた総合的な議論を行う意向を示した.
同日行われた定例記者会見で中川俊男常任理事は,今回の措置について,「中医協という公の場で決まったことが,このような形で凍結されることは残念であるが,日医としてはこの結果を粛々と受け止めたい」と述べるとともに,今後は中医協で,終末期医療における診療報酬上の評価が,より良い形でなされるよう徹底的に議論していくとした.
その後,六月三十日付で関連告示および医療課長通知が発出されたことで,(1)区分B018後期高齢者終末期相談支援料(2)区分B005在宅患者訪問看護・指導料の注七(3)区分C005─1─2居住系施設入居者等訪問看護・指導料の注七に規定する加算等(4)訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法別表通則第一号の四に規定する後期高齢者終末期相談支援療養費─は七月一日をもって凍結し,別に厚生労働大臣が定める日(現時点では定められていない)までは算定できないこととなった.
なお,後期高齢者終末期相談支援料等は,患者およびその家族等と終末期の診療方針等について十分に話し合いを行ったうえ,話し合いの内容を取りまとめた文書等の提供があった後,当該患者の退院時または死亡時に算定されるものであるが,本年六月三十日において,すでに患者およびその家族等に対し当該文書等の提供を行った保険医療機関等については,経過措置として,当該患者に限り,七月一日以後も診療報酬における後期高齢者終末期相談支援料等を算定することが可能である旨,医療課長通知で示された.
また同様に,本年六月三十日において,すでに利用者およびその家族等に対し後期高齢者終末期相談支援療養費に係る文書等の提供を行った訪問看護ステーションについては,当該利用者に限り,七月一日以降も後期高齢者終末期相談支援療養費を算定することができる.
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