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第1131号(平成20年10月20日) |
特定健診・特定保健指導の行方
特定健診・特定保健指導が始まり,早くも半年が経過した.高齢者医療確保法の成立から本年四月の施行を経て今日まで,日医は制度改正に伴うさまざまな課題への対応に努力している.しかし,現状では,この制度改正が,現場に大きな負担と混乱をもたらしている.
そもそもこの制度は,急速な高齢化等による医療費の増加や社会負担の増大に対応するため,生活習慣病予防に着目した健診と予防のシステムを構築するというものである.さらに,その実施を保険者に義務化することにより,効率的な運用と受診率の向上を目指すものである.
そこで,現時点での課題をいくつか挙げてみた.
一,契約をめぐる混乱:行政から保険者に契約の相手が代わったことにより,料金や自己負担徴収額,健診項目(空腹時血糖とHbA1c,クレアチニン,尿酸等),事故への対応(保険者,医師会,実施機関による協議を原則にするなど)等,契約内容が煩雑になった.
二,受診機会:受診券発行の遅れに加え,誕生月健診の実施の有無,受診期間・健診実施機関の限定等保険者により対応が異なる.また,被保険者と被扶養者間の格差も見られる.
三,特定健診:健診項目と基準値,健診精度管理のあり方,データの管理と利用等が検討課題である.
四,特定保健指導:基盤整備の遅れ,研修体制,報告と請求の簡素化等.
五,上乗せ健診:行政によるがん検診,骨粗鬆症検診,肝炎検診等との料金や受診機会の違い,結果報告や請求事務の繁雑さのため,契約の準備や調整等が自治体や保険者により異なる.
六,結果報告と請求:電子的請求にかかわる費用や労力負担の問題,フリーソフトの提供をめぐる混乱と対応の遅れ等を勘案し,経過措置として特定保健指導は紙媒体を容認すべきである.
七,評価体制:評価方法の構築.
いずれにしても,拙速な制度開始(施行)が最大の原因となっている.しかしながら,予防を重視するという今回の制度の方向性は正しいと考えている.
したがって,早急に保険者,実施機関,実施団体,学識経験者等の関係者による検討会を厚生労働省に設置し,これらの課題解決に向けての取り組みを進めることが必要である.また,将来的には健診全般にわたり,運用方法を一元化し,系統立てて実施することも必要となろう.
日医では,現状の取り組みについて,今後も情報収集を行い,次年度以降の契約をきちんと進めることができるよう提言していきたいと考えている.
(常任理事・内田健夫) |