日医ニュース
日医ニュース目次 第1140号(平成21年3月5日)

平成20年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会
看護職員養成を巡る諸問題について議論

平成20年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会/看護職員養成を巡る諸問題について議論(写真) 平成二十年度都道府県医師会医療関係者担当理事連絡協議会が,二月十三日,日医会館小講堂で開催された.
 冒頭,あいさつに立った唐澤人会長は,医師不足を要因の一つとして,地域医療の崩壊の問題が国民的課題となっているが,看護職員についても医師不足問題と同様に,地域の医師会の先生方の献身的な尽力にもかかわらず,不足の状況が続いていることに言及.そのうえで,「厚生労働省や自民党で,看護の質の向上と確保に関する検討が開始されたところであるが,国民により良い医療を提供するためには,看護職員は必要不可欠であり,また,医師との業務分担においても,重要な役割を担っている.本日は,地域医療の現場からの忌憚(きたん)のない意見をお願いしたい」と述べた.
 当日は,(一)報告:看護職員を巡る最近の動向,(二)厚労省との意見交換および諸問題に関する協議─について,報告および質疑応答が行われた.
 (一)では,まず,羽生田俊常任理事が,慢性化している看護職員不足対策の一環として実施した「潜在看護職員再就業支援モデル事業」について報告を行った.十五県医師会の医師会立看護師等学校養成所の卒業生を対象に行った,再就業についてのアンケート調査(粗回答数二千七百五十四件,有効回答件数千三百六十七件,有効回答率四九・六%)によると,いわゆる「潜在看護職員」は,育児にかかわっている女性がほとんどで,看護職員として再就業したいとの希望・意欲は十分あるが,仕事と育児・家庭の両立を望んでいることが分かった.再就業に際しては,休暇が取りやすいことや,院内保育所・学童保育など,育児に対する配慮があることを重視し,勤務時間等もそれらを前提にした勤務形態を希望している.また,離職してからのブランクを埋めるための現実的な研修を望んでいる姿がうかがえる結果となったと説明した.
 そのうえで,看護職への再就業支援対策として,(1)情報交換・収集の場(窓口)の設置(2)多様な勤務形態とコーディネート部門の設置(3)研修の実施─の三点を掲げ,その充実に向けて,さらなる検討を行っていきたいとした.
 また,日本看護協会を中心に,看護教育を四年制に統一するとの議論が上がっていることについては,日医では,(1)看護業務は多様性があること(2)現行養成所からの移行は困難で,養成数の減少を招く(3)四年教育のエビデンスがない─ことを理由に反対していると説明.「国家試験に合格することが基礎教育のレベルであり,看護師の合格率が全体で九〇・三%(三年課程卒業者は九六・二%)であることからも,看護基礎教育は現状で十分であると考えている」とし,学生の教育のレベルアップには,看護教員の資質の向上と,量の確保が必要不可欠であると強調した.
 つづいて,野村陽子厚労省医政局看護課長は,看護職員の確保のためには,増加策としての「養成力の確保」「再就業の支援」,減少阻止としての「資質向上」「離職防止」を四本の柱として対策を講じていると説明.その具体例として,病院内保育所事業,実務研修モデル事業,中央ナースセンター事業などを紹介し,看護職員の確保対策への理解と協力を求めた.
 また,看護職員の臨床技能の向上・強化が一番大きな課題であるとし,文部科学省・厚労省の取り組みとして,看護基礎教育の充実に向けた検討会について解説した.
 (二)では,都道府県医師会から事前に寄せられた質問・意見に対して,羽生田常任理事および野村看護課長が説明を行った.質疑応答では,都道府県医師会から補助金の早期交付実現や専任教員の確保,男子学生の母性実習などへの要望が相次いだ.
 野村看護課長は,補助金については,来年度からは申請締切を早めることで,審査終了後早急に交付するなど,対応する予定であると説明し,理解を求めた.また,羽生田常任理事は,専任教員養成講習会の通信教育の再開を改めて厚労省に要請した.
 最後に,総括を行った竹嶋康弘副会長は,「今後も,現場の状況をしっかりと掌握し,医師不足,看護職不足について予算を確保するよう,政府に対して強く要望していく」と述べ,閉会した.

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