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第1154号(平成21年10月5日) |
第31回産業保健活動推進全国会議
労働者のメンタルヘルス対策の充実と勤務医の労働環境の改善を目指して
第三十一回産業保健活動推進全国会議が九月十日,日医会館大講堂で開催された.
冒頭,あいさつした唐澤人会長は,「近年,勤務医の長時間労働や医師と患者との関係等に絡むストレスなどが相まって,うつ病の罹患,さらには自殺にまでつながるケースが報告されている」としたうえで,日医の勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会の活動を紹介.「行政や関係団体との連携の下,適切に対応していきたい」と述べた.
渡辺孝男厚生労働副大臣(当時)(金子順一厚労省労働基準局長代読)は,メンタルヘルス対策についての取り組みを報告するとともに,これら諸施策を実効あるものとするために,各事業場における産業医の尽力,地域産業保健センター等の活動が不可欠だとして,引き続き協力を求めた.
午前は十日町地域産業保健センター,新潟産業保健推進センターから活動事例報告が行われた.
事業場におけるメンタルヘルス対策
午後からのシンポジウム「メンタルヘルス対策」では,(一)メンタルヘルス対策に関する最新の動向:(1)精神科医の立場から(島悟精神科医・京都文教大学臨床心理学部教授,神田東クリニック院長)(2)行政の立場から(鈴木幸雄厚労省労働基準局安全衛生部労働衛生課長),(二)メンタルヘルス休業者に関する職場復帰の留意点:(1)労働法学の立場から(三柴丈典近畿大学法学部准教授・弁護士)(2)人事労務の立場から(高橋信雄JFEスチール(株)安全衛生部長・労働衛生コンサルタント)─について講演ならびに討論が行われた.
島氏は,昨秋以来の経済危機を背景に,メンタルヘルス不調者や自殺者が増加している一方で,職場におけるメンタルヘルス対策が進んでいないことをデータを基に示し,産業保健体制の構築の重要性を訴えた.
鈴木氏は,厚労省としても,長時間労働者に対する医師の面接制度の導入,『職場復帰支援の手引き』や『自殺予防マニュアル』の普及のほか,全国の「メンタルヘルス対策支援センター」の機能の充実など,さまざまな対策を進めていることを説明した.
三柴氏は,法原則を踏まえた労務不能の判断や復職判定などにおける産業医の役割について説明を行い,高橋氏は,厚労省の『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』運用の留意点などについて解説した.
日医の勤務医に対する健康支援の取り組み
続いて,報告「勤務医の健康支援」では,(一)日医「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」の取り組み(保坂隆同委員会委員長・東海大学医学部教授),(二)勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査結果(和田耕治同委員会委員・北里大学医学部衛生学・公衆衛生学講師),(三)職場環境改善チェックリストの活用による勤務医の健康支援策(吉川徹同委員会委員・財団法人労働科学研究所副所長),(四)大学病院勤務医のこころの健康問題(後藤隆久横浜市立大学大学院医学研究科教授)─について,それぞれ説明が行われた.
保坂氏は,さまざまなストレスで疲弊している勤務医に,精神面を含めた健康回復へのサポートをするため,日医に「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」が設置された経緯を説明.勤務医のストレス状況や健康状態を把握するための調査を実施し,その結果を踏まえて,「勤務医の健康を守る病院七か条」「医師が元気に働くための七か条」を提言したことなどを説明した.
和田氏は,無作為抽出した一万人の日医会員の勤務医に質問票調査(有効回答率四〇・六%)を行った結果,六%が死や自殺について一週間に数回以上考えている一方,五三%の回答者は自身の体調不良について全く相談しないなど,危機的な状況にある勤務医の姿が浮き彫りになったと報告した.
吉川氏は,「医師の健康支援のための職場改善チェックリスト(二〇〇九版)」の活用法を紹介し,後藤氏は,大学病院の性質から,勤務医特有のストレスについての考察を述べた.
その後,協議が行われ,田勗労働者健康福祉機構医監の司会の下,鈴木労働衛生課長,今村聡常任理事,金井雅利労働者健康福祉機構理事,鹿毛明産業医学振興財団事務局長の四氏が,事前に寄せられていた七つの質問などについて,分かりやすく回答を行った.
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