日医ニュース
日医ニュース目次 第1167号(平成22年4月20日)

第122回 日本医師会定例代議員会(平成22年4月2日)
原中会長あいさつ

 4月2日の代議員会において,原中会長は,「会長に選出いただき,光栄と同時に今後の重責を身に染みて感じております.今日は,私のこれからの日医に対する考え方を述べさせていただき,所信表明は後日改めて申し上げたい」として,所信の一端を述べた.

第122回 日本医師会定例代議員会(平成22年4月2日)/原中会長あいさつ(写真) 今回,日本医師会の会長選挙では,日医を今後どのような団体にするか,内部の組織をどうするかを,改めて皆で考え直そうということを提案させていただきました.
 今,われわれ医療者が「勤務医と開業医」という分け方をされ,しかも今回の民主党の予算編成に関しては,本来ならば税金できちんと賄わなければならない政策医療の分まで,医療費を使われてしまったということに対して,大変,義憤を感じております.
 今後,強い医師会をつくるには,開業医の先生方が八万人,勤務医の先生方が二十万人という日本の医師全体のなかでの偏在の問題をきちんと一つにまとめて,本来の医師の活動というものが,国民に対してどのような姿勢で行われなければいけないかを考え,そのために医師の専門集団として,政治に対してきちんとものの言える医師会になることが第一であると思います.
 私たちは今まで,日医は学術団体だという共通の認識を持ってきました.しかし,学術団体とは日医のどこの部分を言うのかというと,はっきりした考え方を,あるいは分析をされている先生方は意外と少ないのではないかと感じます.われわれ医師というものは,高い学問的な専門性を持って,日常の診療・生活に当たるわけですから,学問は,一生涯学ばなくてはいけない課題であることは当然ですが,医師会活動として考えた場合に,どのような位置付けをするかということを,改めて考え直さないといけません.
 確かに,日医のなかには日本医学会という学術団体があります.これは昭和二十年に,もともとあった日本医学会がバラバラになっていたのを,新生日本医師会が出来る時に一緒にしたという経緯があるそうですが,これがずっと私たち医師会の学問的な存在意義を維持してきてくれたことは確かだと思います.しかしながら,現実の問題として,医師会活動に学術的な行動と,実際の医療活動における医師会の態度をどういうふうに組み合わせていくかということを考えると,別々のものかもしれません.
 現在のような,経済が優先されて,本当の医療が後手に回されている環境は絶対に直さなければいけないという信念を,私たちは持たなければいけないと思います.昨日も申し上げたように,良い医療制度がない国民は不幸なのであります.本当に良い医療制度が出来てこそ,国民は生涯,安心と安全を確保されるのです.もともと医療というのは国民に対し,命あるいは健康に対する保障を与えるものであると思いますので,この点をもう一度考え直して,きちんと政府にゼロから考え直していただくような努力をしなくてはいけないと考えております.
 学術団体ということを考えた時,私たちは,毎月日医雑誌や,非常に有用な別冊をいただき,日々の医学の発展を学ばせていただいているので,このことは,大変重要な点であると思いますが,もう一度ゼロから考えて,われわれの団体はどういう団体で,どうあるべきか,ということを,改めて時代の変化とともに考え直さなくてはいけません.
 私たちの仕事は,郡市区医師会や都道府県医師会,日医と三層構造となっております.日本の医師会活動においては,仕事の内容そのものが三層構造というのは必要なことだと私は考えております.
 地元の学校医,あるいは産業医,予防注射,または休日診療や時間外診療,慢性疾患の病院・診療所の連携等については,地元の医師会が中心となって行っております.県医師会では出来ないことを,地元の医師会が住民の方々と接して活動しており,この存在は絶対に必要であると思います.
 また,政治の実権が地方に分散されてきており,県全体の医療,広範囲のさまざまな保険者団体も県単位になってきていることから,そこでの交渉や,県政における保健衛生の顧問,あるいは委員として活躍するのは都道府県医師会であろうと思います.
 日医は,都道府県あるいは郡市区医師会のすべての動きを勘案して,現実に先生方の医療活動,あるいは社会福祉活動,そういうものに対する行動を保証していくような大きな団体にならないといけません.そのために,政府との交渉あるいは関係省庁の担当部署との交渉が大変重要になりますし,政府に設置された諸々の審議会,諮問会議に対しても,私たちは会員一人ひとりの先生方の立場がきちんと守られるような意見を述べていかないといけません.これは日医の仕事であろうと思います.医療費も然りで,医療制度の改革もそうです.
 これまでは国から示され,決定されたことのみに反論するしか出来ませんでしたが,これではいつまでたっても私たちの意見は国に反映されません.これからは,前もって,政府案として出される前に私たちのところに相談に来るような医師会にならなければいけないと思っております.そうすることによって,私たちが専門家集団として,本当に国民のための医療を考えた判断をもって政府に助言が出来るのではないかと思っております.
 最後に,現在の日医は,ややもすると,一般会員の声が届かない医師会になっております.都道府県と地域の医師会の疎通はあると思いますが,少なくとも,都道府県を飛び越しての日医への声というのはなかったと思います.今後,日医は一人ひとりの会員によって構成されているという原点に戻り,一会員の声も大切に聴くような組織にしていかなくてはいけないと思っております.
 そのほか,いろいろ話さなくてはいけないことがありますが,本日は基本的なことだけ述べさせていただき,選挙制度,あるいは医政活動,そういうものに関しては,後ほど先生方に送付させていただきますので,お許しいただきたいと思います.
 どうもありがとうございました.

原中会長 紹介
 昭和15年福島県出身.医師を志したきっかけは,幼少時に,小児結核で死線をさまよった姉を治療してくれた熊谷岱蔵医師(東北大学第7代総長)から,「良い目をしているから,医者になれる」と頭をなでられたこと.
 昭和41年日本大学医学部卒業後,東京大学医科学研究所において制がん剤等を研究し,米国のがん研究所にも留学する.
 40歳代半ば過ぎ,直腸がんがみつかり,手術を受ける.平成3年「生まれ変わったつもりで地域医療に取り組む」との思いから,夫人の実家が経営する病院を継ぐ.地域医療に携わるなかで,医療崩壊を目の当たりにして,平成20年,「後期高齢者医療制度」の撤回を求め,地元茨城県で署名活動を展開.民主党政権に対し,医療・介護・福祉面で専門家として助言していきたいとしている.
 茨城県医師会副会長,会長,日医理事を歴任.診療科目は,内科,呼吸器科,消化器科.

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