日医ニュース
日医ニュース目次 第1174号(平成22年8月5日)

中医協総会(7月14日)
いわゆる「55年通知」の問題について議論

中医協総会(7月14日)/いわゆる「55年通知」の問題について議論(写真) 中医協総会が七月十四日,都内で開催され,ドラッグラグ解消のため,いわゆる「五十五年通知」の問題について議論が行われた.
 いわゆる「五十五年通知」は,昭和五十五年に当時の厚生省(現厚生労働省)保険局長より,全国の社会保険診療報酬支払基金理事長宛に出された通知であり,有効性・安全性が確立された医薬品は薬理作用が同じであれば適応外使用の医薬品であっても保険給付の対象とすることを認めるもので,患者団体からは,その適用の拡大が求められている.
 嘉山正孝委員は,抗がん剤は適応外で使用していることが多いが,保険給付外のために,患者,医療機関は大きな負担を強いられていると指摘.その解消のためにも,五十五年通知が適正に運用出来るようにしなければならないとして,中医協で審査基準を作成し,審査の標準化を図ることを提案した.
 これに対して,支払側は難色を示したが,遠藤久夫会長は,「基準を作ることは出来ないが,中医協として何らかの仕組みを提案し,問題提起をすることは出来るかも知れない」として,引き続き,この問題について議論していく考えを表明.診療・支払両側も同意し,今後は,「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で検討が行われている公知申請の問題と絡めて,五十五年通知の問題を議論していくことになった.
 また,当日の総会では,二つの診療報酬調査専門組織(医療機関のコスト調査分科会,DPC評価分科会)から,調査結果が報告された.
 田中滋医療機関のコスト調査分科会長は,平成二十一年度「医療機関の部門別収支調査実施に関するアンケート調査」の結果を報告した.
 今回のアンケート調査は,平成十五年度から毎年実施されている「医療機関の部門別収支調査」の負担や問題点等を把握し,今後の調査を簡素化する方法について検討するために行われたものである.
 田中分科会長は,アンケート調査から,医師個人の月給や勤務時間に関して,既存のデータの活用が出来ないなどの問題点が明らかとなったとし,調査項目の簡素化(案)を提出.議論の結果,中医協としてこれを了承することになった.
 これにより,平成二十二年度の調査は,了承された案を基に調査項目を簡素化し,DPC対象病院・準備病院以外の病院にも対象を拡大して,実施することになった.
 西岡清DPC評価分科会長からは,平成二十一年度「DPC導入の影響評価に関する調査」および平成二十一年度特別調査「再入院(再転棟)に係る調査」の結果が報告された.
 西岡分科会長は,今回の調査結果からは,医療資源をより多く必要とする患者を避けるような患者の選別や,病態が安定しない状態での退院といった粗診粗療をうかがわせる傾向は見られず,DPC導入による診療内容への悪影響は見られなかったと説明.再入院についても,粗診粗療の影響による再入院増加を示唆する結果は認められなかったとした.
 そのほか,当日は,厚労省より,前回の総会で診療側が問題提起を行った「新薬創出・適応外薬解消等促進加算と医薬品価格交渉の問題」に関して,日本製薬工業協会より,促進加算の周知活動の自粛を求める文章が出されたことなど,その後の動きについての報告が行われた.
 これに対して,鈴木邦彦常任理事は,促進加算の導入を理由とした価格の引き上げを求める声がいまだにあるとして,さらなる徹底を求めた.
 また,総会の最後に,鈴木常任理事は,医薬品の長期投与の問題を取り上げ,「大学病院などでは一回の処方で糖尿病薬が一年分も投与される例がいまだにあるとの指摘があるが,一年もの間,医師の診察無しでいるのはむしろ容態を悪化させ,日本のきめ細かい医療が崩れてしまう」と述べ,厚労省が実態を確認することとなった.

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