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第1176号(平成22年9月5日) |
大学病院の医療に関する懇談会
医学部の新設や勤務医の負担軽減策などについて協議
大学病院の医療に関する懇談会が八月四日,日医会館で開催された.
冒頭,あいさつに立った原中勝征会長は,「今まで大学病院は特殊な環境に置かれていたが,医療費削減により医師が減らされ,人材派遣の機能がなくなるなかで,教育以外にも大切なものがあったともう一度見直す時期が来たのではないか」としたうえで,「これからの日本の医療を考えるに当たり,さまざまなアドバイスをいただければありがたい」と期待を寄せた.
全国医学部長病院長会議の黒岩義之会長は,同会議について,「国公私立大学の医学部長,病院長百六十名が一堂に会する会議であり,医療と医学の進歩発展に寄与すべく,関係省庁に政策提言をする使命を持っている」と紹介し,日医との協力に意欲を示した.
協議では,(一)医学部の新設に対する対応,(二)勤務医の負担軽減策,勤務環境の改善,(三)医学・歯学教育に係るカリキュラムの改善,(四)共用試験の資格試験としての位置付け,(五)大学病院における保険診療の教育,(六)病院連絡協議会―について意見交換が行われた.
(一)では,まず,大学病院側が医師数の将来予測のデータを示し,現状の定員のままであっても人口減少により,近い将来,定員の大幅な削減が必要になることから,莫大な費用のかかる医学部の新設より,既存の医学部の定員を増減することで対応すべきだと主張.また,入学定員の増加により,学力低下や教員不足を招くとの懸念を示したのに対し,中川俊男副会長は,七月十四日の定例記者会見の資料を基に,日医としても,既に医学部の新設により医師数増加を図ることに反対の姿勢を表明していることを説明した.
また,入試における地域枠の問題も取り上げられたが,大学病院側は,必ずしも地域枠の導入が医師の地域への定着に結び付くわけではないことなどを指摘.入学後の奨学金による支援や,医師の家族にも配慮した環境整備の重要性を強調した.
(二)では,ドクターフィーに関する日医の見解について質問があり,中川副会長は,あくまでも病院が医師に支払うべきもので,そのために診療報酬の増額を求めていくとの方向性を説明した.
一方,大学病院側からは,大学病院における厳しい経営環境や人員不足の状況が報告され,簡単に人を増やせない現状においては,医療機関を集約することで対応したいとの意見も出された.
(三)(四)では,大学病院側より「医学・歯学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂や,共用試験の実施に取り組んでいることが報告され,共用試験の資格試験としての位置付けを明確化することで,学生による医行為の法的裏付けを整え,診療参加型の臨床実習の実施を目指す姿勢が示された.
(五)では,日医より,大学における保険診療の教育の充実を要請,(六)では,日医より,全国医学部長病院長会議,四病院団体協議会等と意見交換する場として,「病院連絡協議会」の設置を提案し,大学病院側に協力を求めた.
報告事項では,三上裕司常任理事が,新しい日医の生涯教育制度について説明を行い,最後に横倉義武副会長が,「日本の医療の在り方が悪く動くかどうかの瀬戸際にある.さまざまな問題に共通認識を持ち,政府に働き掛けをしていきたい」と結んだ.
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