日医ニュース
日医ニュース目次 第1180号(平成22年11月5日)

日医定例記者会見

10月20日
日本脂質栄養学会のガイドラインに異議

日医定例記者会見/10月20日/日本脂質栄養学会のガイドラインに異議(写真) 原中勝征会長は,久史麿日本医学会長,寺本民生日本動脈硬化学会副理事長とともに記者会見を行い,日本脂質栄養学会が発表した『長寿のためのコレステロールガイドライン二〇一〇年版』に対する日医の見解を明らかにした.
 同ガイドラインは,日本脂質栄養学会が九月一日に発表したもので,そのなかに「コレステロール値が高い方が長生きする」との記述があったことから,医療現場に混乱が生じ,日本動脈硬化学会からは,北徹理事長名による「科学的根拠がなく,必要な患者の治療を否定するもので容認出来ない」旨の声明が十月十四日に出されていた.
 当日の会見では,まず,原中会長が,「今回の内容をめぐる一部メディアの報道により,一般国民のみならず,患者,家族に大きな混乱が生じ,高いリスクをもつ家族性高コレステロール血症の患者のなかには服薬を中止している例もあると聞いている」として,今回の事態に憂慮を示し,「国民に正しい理解をしてもらうため,本日,記者会見を開催した」と述べた.
 そのうえで,原中会長は,ガイドラインの内容に関して,「あくまでも治療は学問的な根拠に基づいて行われなければならないが,このガイドラインには問題も多く,健康社会の実現を目指す日医としては看過することは出来なかった」として,その内容に異議を唱えるとともに,マスコミ各社に対しては,健康・医療に関する報道についての配慮を求めた.
 一方,久日本医学会長は,血清コレステロール値のみを取り上げて総死亡率を論じている今回のガイドラインの内容に疑問を投げ掛けたうえで,日本医学会臨床部会運営委員会の委員に本件に関する意見を聞いたことを明らかにし,「日本医学会として,今回のガイドラインは明らかに間違いであると指摘したい」と強調した.
 また,寺本副理事長は,日本動脈硬化学会の声明を基に,今回のガイドラインの問題点((1)科学的根拠に乏しいものをガイドラインと呼んでいる(2)観察研究であるコホート研究において,血清コレステロールと総死亡との関係を論じている(3)コホート研究と臨床介入試験との違いを混同している)を改めて指摘し,学会の主張への理解を求めた.

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