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第1218号(平成24年6月5日) |
第191回世界医師会(WMA)プラハ中間理事会開催される
─横倉会長,羽生田副会長,石井常任理事が出席─
第百九十一回WMA中間理事会が四月二十六〜二十八日にチェコのプラハで開催され,加盟四十医師会と,オブザーバーの赤十字国際委員会,国際医学生連盟,国際獣医師連盟等より約二百名が参加した.本会からは横倉義武会長,羽生田俊副会長,石井正三常任理事並びにアドバイザーとして畔柳達雄参与が出席した.
理事会に先立ち,ヘルシンキ宣言修正に関する作業部会及び災害医療に関する作業部会が開催された.理事会では,羽生田副会長が新理事に就任した他,さまざまな議題について審議された.
また,会期中にアメリカ,韓国,台湾,イスラエルの各医師会と個別に懇談の場を持ち,医療制度などについて意見交換を行った.
理事会における主な議事内容は以下のとおりである.
(一)医の倫理関係
一,総会に付託される文書
・臓器及び組織の提供に関するWMA声明案(臓器移植や組織提供のあるべき姿を再認識する内容)
・死刑に関するWMA決議案(死刑に医師が関わるべきではないとする内容)
二,検討のため,各国医師会に回付される文書
・人間中心の医療に関するWMA声明案
三,作業部会に関する件
・ヘルシンキ宣言の修正:六月にロッテルダム(オランダ)で作業部会,十二月にケープタウン(南アフリカ)で第一回専門家会議,二〇一三年三月初旬に東京で第二回専門家会議をそれぞれ開くことで合意を得た.また,ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則.一九六四年に採択され,医療技術の進歩に順応し,過去八回改訂されてきた)採択五十周年に当たる二〇一四年に記念行事を開催することを決定した.
四,その他
・緩和的鎮静の倫理に係るWMA声明案は,既存の安楽死に関する宣言などと内容が重複するため,新たな声明案としては取り扱わないこととなった.
(二)社会医学関係
一,総会に付託される文書
・暴力的状況における医療従事者の保全に関するWMA規定の修正案(医療者の根本的使命から保全を求める内容)
・電子タバコに関するWMA声明修正案(電子タバコの利用に伴う危険性を指摘した内容)
・医療分野における暴力に関するWMA声明修正案(医療分野での暴力への効果的な対処を求める内容)
二,検討のため各国医師会に回付される文書
・強制的不妊治療に関するWMA声明案(倫理的条件を無視する慣習を強く非難する内容)
・ワクチンの優先に関するWMA声明案(ワクチン接種の重要性の認識を高め,接種を奨励する内容)
三,作業部会に関する件
・医師のストライキに関する倫理についてのWMA声明案:医師のストライキについては各国での社会的,文化的な背景があるため,作業部会を設けて検討することとなった.構成は,日医始め,イスラエル,英国,韓国,南アフリカ,ロシア,米国,トルコの各医師会.
四,その他
一部の国における医師のプロフェッショナル・オートノミーへの圧力に対する非難をWMA理事会決議としてまとめ,速報として発信することとなった.
・「シリア,バーレーンにおけるヘルスケアへの危機に関するWMA理事会決議」
・「トルコにおけるプロフェッショナル・オートノミーへの弾圧に関するWMA声明案」
・「西アフリカでの医師のオートノミーに関するWMA決議案」(セネガル医師会提案)
(三)財務企画関係
一,今後予定されているWMA会議
総会:二〇一二年十月十〜十三日,バンコク(タイ)
中間理事会:二〇一三年四月,ロンドン(イギリス)
総会:二〇一三年十月,フォルタレザ(ブラジル).学術集会テーマ「非感染性疾患について」
中間理事会:二〇一四年四月,東京
総会:二〇一四年十月,南アフリカ
二,新規加盟について
加盟申請がミャンマーとスリランカからあり,総会に付託することとなった.
三,WMA運営規則の見直しについて
役員・委員長が選出される場合,被推薦者は選挙の場に出席していることを原則とすることが明記されることになった.
四,災害医療に関する作業部会について
日医も加わってきた本作業部会は,今後も作業を継続することとなった.
五,WMA賞について
WMAの広報活動の一環としてWMA賞(医療に特別な貢献のあった個人などを表彰)を設けるという案がラトビア医師会から提案されたが,選出方法や費用を勘案して,提案は撤回された.
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