日医ニュース
日医ニュース目次 第1229号(平成24年11月20日)

日本医師会市民公開フォーラム
「ストップ!糖尿病〜どう悪化を防ぐか〜」をテーマに

日本医師会市民公開フォーラム/「ストップ!糖尿病〜どう悪化を防ぐか〜」をテーマに(写真) 日本医師会市民公開フォーラムが十月二十一日,「ストップ!糖尿病〜どう悪化を防ぐか〜」をテーマに,日医会館大講堂で開催された.
 道永麻里常任理事の総合司会で開会.横倉義武会長(今村聡副会長代読)は冒頭あいさつで,今回のテーマである糖尿病について,平成十七年二月に日本糖尿病対策推進会議を立ち上げ,治療や予防の啓発などに努めてきたと説明.「フォーラムを通じて多くの方々が病気に対する理解を深め,生活習慣の改善や定期的な健康診断の受診,かかりつけ医への早期受診をすることで,病気の発症や重症化の防止に役立てばと願っている」と述べた.
 続いて,四人のパネリストにより,VTRやスライドを交えたパネルディスカッションが行われた.

二型糖尿病は体質(遺伝)・肥満・高齢化に関連

 稲垣暢也京大大学院医科学研究科糖尿病・栄養内科学教授は,血糖濃度が慢性的に高くなる病気である糖尿病について,体質(遺伝)・肥満・高齢化により,なりやすい二型糖尿病とその診断基準について説明.更に糖尿病薬の効果について,インクレチン関連薬やインスリン注射薬の特徴を概説し,しっかり治療すれば,病気の進行は抑えられるとした.

自覚症状が出にくいため,早期の発見・治療が重要

 林道夫NTT東日本関東病院糖尿病・内分泌内科部長は,糖尿病治療の基本となる血糖コントロールについて説明し,患者自身が治療法を理解し,日常生活の中で長期に実践していく必要があるとした.また,糖尿病の治療には,投薬の他に食事・運動が重要とし,食事のポイントや運動の効果を説明した.
 更に,糖尿病が重症化した例として,三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)を患う患者の写真を交えながら解説.「合併症はかなり進行してからでないと自覚症状が出にくいため,早期の発見・治療が重要」と述べた.

患者とかかりつけ医と専門医の連携が重要

 宮川高一クリニックみらい国立院長/東京都医師会生活習慣病対策委員は,その他合併症として動脈硬化(大血管障害)について,糖尿病に伴う動脈硬化巣と血栓の形成を説明.動脈硬化は,「高コレステロール血症や食後高血糖により白血球の一種が増加すること」「高血圧,糖尿病や喫煙により血管に傷がつきやすくなること」「高中性脂肪血症や多血症により血液が固まりやすくなること」など,複数の要因が重なることで発症するとした.更に,糖尿病はさまざまな疾病の危険因子として注意する必要があるため,患者とかかりつけ医と専門医の連携が重要と訴えた.

糖尿病患者は歯科も受診を

 佐藤保日本歯科医師会常務理事は,糖尿病が歯周病に及ぼす影響について説明.糖尿病患者は歯周病になりやすく,糖尿病治療を行うことで歯周病も改善され,歯周病を改善することで血糖コントロールがしやすくなるなどの関係性を示し,定期的に歯石除去を行うなど,かかりつけの医師への受診とともに積極的な歯科への受診も奨励した.
 質疑応答では,一般の参加者からの,本年四月より表記変更となった糖尿病診断指標の一つであるHbA1cの内容に関する質問などにパネリストが回答し,フォーラムは盛会裏に閉会した.参加者は五百四十三名.
 なお,当日の模様は,十二月二十二日(土)午後二時より約一時間,NHK Eテレ「TVシンポジウム」で放映される予定.

このページのトップへ

日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/
Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved.