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第1232号(平成25年1月5日) |
平成24年度家族計画・母体保護法指導者講習会
改正母体保護法の課題について活発に議論

平成二十四年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年十二月一日,日医会館大講堂で開催された.
今村定臣常任理事の司会で開会.冒頭あいさつした横倉義武会長(羽生田俊副会長代読)は,医師の職能集団である医師会が責任を持って母体保護法指定医師の指定を行うことの意義を強調.講習会の参加者に対しては,「各地域において,本日の成果を活用し,引き続き活躍して欲しい」と述べた.
今ある病床の使い方を変えるべき─原医政局長
続いて,原 壽厚生労働省医政局長による講演「日本の医療提供体制の現状と課題」が行われた.原医政局長は,今後,団塊の世代が高齢化していく中で,二〇三五年以降の入院患者は百八十万人以上になるとの将来推計を紹介.その人たちにどういう医療を提供出来るかを検討することが喫緊の課題だとした.
厚労省が考える対応策については,「少子化が進み,医師,看護師の十分な確保が困難になることが予想される中で,現在の病床数百二十五万床(一般プラス療養)を増やすことは不可能だ」とし,「むしろその使い方を変えることを考えている」と説明.そのために必要なこととしては,「地域の実情に応じた医師等確保対策」「在宅医療・連携の推進」「病院・病床の機能の明確化・強化」「医療従事者間の役割分担とチーム医療の推進」を挙げ,それぞれに対応した厚労省の取り組みを紹介した.
指定基準の見直しに向け,多角的な議論を開始─今村常任理事
引き続き,福田稠日医母体保護法等に関する検討委員会委員長(熊本県医師会長)を座長として,シンポジウム「改正母体保護法の課題」が行われた.
今村常任理事は,改正母体保護法が成立するまでの経緯について,「六十四年間にわたる実績を強調するとともに,医師会によるプロフェッショナル・オートノミーをより厳格に発揮し,母体保護法の更なる適切な運用に努めることを主張した結果,全ての都道府県医師会が引き続き,母体保護法指定医師の指定権をもつことが出来るようになった」と説明.非会員に対する指定の取り扱いに関しては,指定基準に非会員が指定を受けることが困難となるような文言がある場合には,見直しが必要になるとした.
更に,同常任理事は,母体保護法指定医師の研修カリキュラムについて,精神保健指定医の研修カリキュラムが統一的に組まれているのに比べ,都道府県ごとに違いがあるとの問題点が指摘されていることを踏まえ,会内の「母体保護法等に関する検討委員会」で,研修のあり方を含め,指定基準の見直しに関する議論を始めたことを報告.「実態に合わなくなっているものを見直すとともに,多角的に検討し結論を得たいと考えているので,忌憚(きたん)のない意見を聞かせて欲しい」と述べた.
白須和裕小田原市立病院長は,会内の「母体保護法等に関する検討委員会」の下に設けられた「母体保護法指定医師の指定基準モデルワーキンググループ」で行われている指定医師の指定・更新のあり方の見直しに向けた検討内容を説明.その中では,「指定医師の指定に当たって,人格をどのように評価することが妥当か」「指定医師の指定や更新における質の高い講習会や研修会をどのように構築するか」等が論点になっているとした.
吉村 典慶大教授は,日本の現状について,(1)三十七歳以降に不妊治療を受ける人が多いこと(2)総出生児数の三十七人に一人が体外受精で生まれていること(二〇一〇年)―等を紹介.わが国の生殖医療の問題点としては,規制するための法律が未整備であることを挙げ,その改善を求めた.
更に,吉村教授は,日刊紙でも取り上げられた「無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)」についても言及.(1)あくまでもスクリーニング検査であり,マスクリーニングとして行わないこと(2)適切な遺伝カウンセリング体制の整備(3)染色医体異常児を産む選択をサポートする社会の構築―等が必要だとするとともに,今年度中に日本産科婦人科学会として指針をまとめ,公表する予定であることを明らかとした(昨年十二月十五日公表済.全文は日本産科婦人科学会HP参照).
指定発言を行った桑島昭文厚労省雇用均等・児童家庭局母子保健課長は,改正母体保護法の内容を概説するとともに,わが国の人工妊娠中絶の件数や実施率について,(1)都道府県別にみると,実施率にはバラツキがあり,二倍以上の地域差が存在すること(2)二十歳未満で実施率が若干増加していること―等を説明した.
その後の討議では,母体保護法指定医師の指定・更新のあり方やNIPTへの対応等について,活発な意見交換が行われ,講習会は終了となった.
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