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第1233号(平成25年1月20日) |
第1回医療事故調査に関する検討委員会
会長諮問は「医療事故調査制度の実現に向けた具体的方策について」

医療事故調査に関する検討委員会の初会合が昨年十二月二十六日,日医会館で開催された.
医療事故への対応については,平成十八年の福島県立大野病院での産婦死亡事故への刑事介入を契機に社会的な課題として熱心に議論され,厚生労働省は,「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」を作成したが,二十一年の政権交代等によって議論が中断し,法律の制定には至らなかった.二十四年二月には,厚労省に「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」が発足し,日本医療安全調査機構においても医療事故調査のための第三者機関のあり方について,関係団体の代表による議論が重ねられている.
一方,日医においては,「医療事故責任問題検討委員会」を二度にわたり組織して検討を重ね,二十二年には「医療事故調査に関する検討委員会」を設置.二十三年六月に「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言」として報告書を取りまとめ,医療現場が委縮することなく誠実かつ積極的に医療提供に取り組むことが出来るような医療事故調査制度を自律的に創設することを提言した.その後,医療界各方面と協議を重ね,昨年九月には,「診療に関連した予期しない死亡の調査機関設立の骨子(日医案)」の案文として,院内事故調査と第三者機関への届出を適切に組み合わせることによって,診療関連死を医師法二十一条の異状死届出義務の対象から外す制度を構築するという,現時点における日医の考え方を示した.
本委員会は,これを踏まえ,医療事故調査制度の在り方と刑事司法の関係等について,医療界としての見解を取りまとめ,早期に実現させていく方策を検討するために設置されたものである.
冒頭,あいさつに立った横倉義武会長は,「医療事故調査制度の創設に向けた基本的提言」を基に,都道府県・郡市区医師会や,全国医学部長病院長会議,四病院団体協議会などと意見集約を図ってきたことを報告.その上で,「善意で行う医療行為を刑事罰に問うことはあってはならない.医療にとって,どういう調査の在り方が良いのかご議論頂き,一つの方向にまとめたい」として,忌憚(きたん)のない意見交換を求めた.
引き続き,横倉会長により,委員長に寺岡暉寺岡記念病院理事長・元日医副会長が指名され,諮問「医療事故調査制度の実現に向けた具体的方策について」が,寺岡委員長に手交された.
討議に先立ち,高杉敬久常任理事が,これまでの議論の経過を説明し,年度内を目途に答申を取りまとめたいとの意向を示した.
討議では,昨年十月に開催された厚労省の「第八回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」で,医政局医事課長が医師法二十一条に関し,診療関連死が全て警察の届出対象ではなく,死体を検案して異状があった場合とする解釈を示したことが取り上げられたが,「一課長の発言で二十一条問題が解決したと考えるのは早計ではないか」などの意見が相次いだ他,医師が安心して働けるよう,二十一条問題解決の重要性と慎重な対応の必要性が指摘された.
医療事故調査委員会の在り方に関しては,院内の委員会だけでは患者家族の理解が得られにくいことから,院外に第三者的機関として設ける方向でおおむね一致しており,今後,具体的検討を深めていく.
医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)
水谷 匡宏(北海道医常任理事)
橋本 省(宮城県医常任理事)
橋本 雄幸(東京都医理事)
石渡 勇(茨城県医副会長)
二井 栄(三重県医常任理事)
松原 謙二(大阪府医副会長)
清水 信義(岡山県医副会長)
堤 康博(福岡県医専務理事)
寺岡 暉(寺岡記念病院理事長)
有賀 徹(昭和大学病院院長・全国医学部長病院長会議理事)
神野 正博(全日病副会長・四病院団体協議会)
鈴木 厚(川崎市立井田病院地域医療部長)
坂井かをり(NHKエデュケーショナル科学健康部シニア・プロデューサー)
畔柳 達雄(日医参与)
奥平 哲彦(日医参与)
手塚 一男(日医参与)
【高杉常任理事・医事法・医療安全課】
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