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第1233号(平成25年1月20日) |

「真っ赤な嘘(うそ)で,白々しい」が……

ある会合で隣の方が,季節柄お風邪を召された様子.
咳が止まらず,五指に余る薬を処方されて律儀に服用されている.しかし,かなりのヘビースモーカーと見受けられるので,いささかそれを揶揄(やゆ)したら,当方の無礼を洒脱(しゃだつ)な言葉でやんわりと窘(たしな)められた.揶揄など医師にあるまじき行いと反省しきりだが,直前の診療で在宅酸素療法中にもかかわらず禁煙出来ない受診者に困り果てた思いを引きずっていたからか.
禁煙指導に難儀するのは,内科医ならどなたも経験があるはずだが,我夫は長い臨床経験の間で滅多(めった)に困ったことが無いと言う.癪(しゃく)に障るも後学のために聞いてみた.
「こう言うんだよ.『実は僕も最近まで吸っていたけど,簡単に禁煙出来たよ.副作用もあるけど,かなり良く効く薬があるよ.どうしても自力で禁煙出来なければ,薬を使ってみようかなって気軽に考えてごらん.気持ちが楽になって禁煙成功するかもよ』って」
えっ? あなたが禁煙したのは二十年以上前じゃない.それって最近? ついでに落ち着くまで随分と機嫌が悪かったし.
「お釈迦様だって困っている人を救うためには嘘をついても良いと言ってるでしょ.ほら,嘘も方便とさ」バチ当たりな夫は季節外れの苺にたっぷりと砂糖をかけて,にんまり.全く,この次は糖尿病の生活指導を彼から教示して頂きたいものである.でもその前に,久しぶりに法華経を読み直してみようかしら…….
(美)
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