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第1237号(平成25年3月20日) |
日医主催による世界医師会(WMA)ヘルシンキ宣言改訂専門家会議開催
世界医師会(以下WMA)のヘルシンキ宣言改訂専門家会議が,日医主催により,二月二十八日から三月一日にかけて,都内のホテルで開催された.
ヘルシンキ宣言は,ヒトを対象とする医学研究において,医師が守るべき最も基本的な倫理規範として,一九六四年,WMAヘルシンキ総会で採択されたWMAを代表する文書である.WMAでは,同宣言の採択五十周年に当たる二〇一四年を目標に,全面的な改訂作業を行っており,今回の会議は,二〇一二年十二月の南アフリカ共和国ケープタウンにおける専門家会議に次いで,アジアの専門家の意見をヒアリングするため開催されたものである.
会議には,日医から横倉義武会長,石井正三常任理事,畔柳達雄参与,久史麿日本医学会長が出席した他,二十二カ国から総勢百三十四名が参加した.主な出席者は,日医役員,会員,国際保健検討委員会委員,WMA会長他役員,改訂作業部会委員,アジア大洋州医師会連合(CMAAO)会長他役員,国内外有識者,厚生労働省,米国厚生省,日本製薬工業協会,米国研究製薬工業協会(PhRMA),武見フェロー,若手医師ネットワーク(JDN),国際医 学生連盟─日本(IFMSA─Japan)等であった.
二十八日,横倉会長は歓迎の辞で,山中伸弥教授のiPS細胞の業績に言及.革新的な医療技術が開発されても,実際の医療に供されるためには人間を対象とした臨床試験が不可欠であり,そのための医の倫理の最も信頼の高いガイドラインがヘルシンキ宣言であると理解しているとして,当会議を日本で開催することの意義を述べた.
久日本医学会長は,最近の医学の進歩と臨床への世界的な広用には目覚ましいものがあり,ヘルシンキ宣言には絶え間ない改訂が求められているとして,度重なる改訂に対するWMAの貢献を高く評価するとした.
WMAウィルソン会長(前アメリカ医師会長)は,当会議の目的を,同宣言の中核的な原則を変えることなく,今日の世界の複雑さに対応するための改訂が必要かを判断することにあると述べた.
田村憲久厚生労働大臣(矢島鉄也厚労省健康局長代読)は,人を対象とした研究に係る指針等の取りまとめでは同宣言の内容を踏まえて策定してきたとし,改訂作業に国としても大変注目していると述べた.
議事では,初日は,基調講演二題,「バイオ・バンク」(石井常任理事が共同座長,同志社大学位田隆一特別客員教授講演他),二日目は,「保険・補償・保護」(畔柳参与講演他)「資源不足・臨床研究終了後の諸問題」「社会的弱者グループ」「医の倫理委員会」(東京大学武藤香織教授講演)のセッションにおいて,日本三名,アジア七名,欧米三名の演者による講演が行われた他,米国厚生省,厚労省,日本製薬工業協会,PhRMAからコメントが寄せられた.
会議終了後,横倉会長,石井常任理事,WMAのクロイバー事務総長,パルサ・パルシ作業部会長が出席し,石川広己常任理事の司会,石井常任理事の英語の進行により日医主催の記者会見が行われた.横倉会長は,当会議を主催することでiPS細胞を始めとする先端医療の進展を支援していきたいと改めて表明した.石井常任理事は,バイオ・バンクのセッションやビッグデータに関連した内容の同宣言への収載に言及した.クロイバー事務総長は,「今回の改訂専門家会議はアジアの専門家の意見を伺う場として,非常に有意義であった」と述べた.
なお,会議に前後して,作業部会が開催され,石井常任理事,畔柳参与が参加し,バイオ・バンクのような重要な課題が提起されたことを認識し,改訂版に取り入れるべきであることの合意を得た.
今後は,四月のWMAバリ中間理事会での議論を経て,パブリックコメントを求め,八月後半のワシントンD.C.における専門家会議の後,十月のWMAブラジル総会で最終的な改訂文書の合意を得る予定となっている.
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