日医ニュース
日医ニュース目次 第1238号(平成25年4月5日)

プリズム

人との距離感

 人にはそれぞれ自分の周りに,他人には侵されたくない空間があり,パーソナルスペースと呼ばれている.満員電車やエレベーターの中では,いやも応もなくこのスペースに他人が入ってくる.それを紛らわすために体の向きを変えたり,視線を上の方に投げたりする.
 男性の方が女性よりもパーソナルスペースは広いそうだ.また,その形は楕円(だえん)形をしていて,左側に広いとのこと.これは本能的に心臓のある左側を守るためであり,男性はそれだけ他人を警戒する意識が強いのだろう.
 また,性別だけでなく国や文化によってもこの広さが違ってくる.日本人は礼節を重んじるため,欧米や他のアジア諸国の人々に比べてだいぶ広めである.
 心理学でこの距離は,相手との人間関係によって変化すると言われている.仕事上の関係かプライベートな関係かでも,相手が異性か同性かによっても違ってくる.通常は異性に対しての方が広いパーソナルスペースが必要だが,お互いに好意を抱くとその距離はずっと近づいてくるだろう.
 それでは,診察室では一体どれくらいの距離が保たれているのだろう.例えば問診をしている時は普通の距離だが,胸やお腹の診察をしたり,注射を打ったりする時は明らかに患者のパーソナルスペースを侵すことになる.だが,患者がそれを許容するのは医師を信頼しているからである.
 時には冗談など言いながら,かかりつけ医は距離をなるべく縮めるように努力しているだろう.しかし,医師会となると,その距離感はどうだろう.もっと遠いものになっていると言わざるを得ない.医師会との距離を縮めてもらうためには,医師会自身がもっと視線を市民と同じレベルにする努力と,かかりつけ医が医師会について説明することが必要だ.医師会と市民の距離においても,かかりつけ医の果たす役割は大きい.

(No.8)

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