日医ニュース
日医ニュース目次 第1239号(平成25年4月20日)

種々の質問・要望に対して,理事者側から詳細に回答

種々の質問・要望に対して,理事者側から詳細に回答(写真) 当日は,午前九時三十分,加藤寿彦議長が開会を宣言.横倉会長があいさつを行った後別記事参照,平成二十四年度中に物故された会員の霊に,全員で黙祷を捧げた.
 続いて,羽生田たかし副会長が会務報告を行い,議事に入った.
 まず,第一号議案「平成二十四年度日本医師会会費減免申請の件」が上程され,今村聡副会長の提案理由説明の後,賛成多数で可決.
 次いで,第二号議案「平成二十五年度日本医師会事業計画の件」,第三号議案「平成二十五年度日本医師会予算の件」,第四号議案「日本医師会会費賦課徴収規程一部改正の件」,第五号議案「日本医師会会費賦課徴収の件」が一括上程された.
 第二号議案については羽生田副会長が重要課題(下掲参照)等を中心に説明.また,第三,四,五号議案については今村副会長が提案理由を説明し,第四号議案については,日医の公益社団法人への移行に伴い,会費収入の五〇%以上を公益事業会計に振り分けるための措置であるとした.
 その後,笠原孝財務委員会委員長が,財務委員会(一月十一日並びに三月三十日開催)における審議結果の報告を行い,四議案は賛成多数で可決した.
 引き続き,代表質問と個人質問に移った.

平成25年度日本医師会事業計画重要課題一覧

  1. 東日本大震災への対応と今後の災害対策
  2. 医療政策の提案と実現
  3. 医の倫理の高揚と医療安全対策の推進
  4. 医師会の組織強化と勤務医活動の支援
  5. 生涯教育の充実・推進
  6. 日本医学会とのさらなる連携の強化
  7. 医療分野におけるIT化の推進
  8. 広報活動の強化・充実
  9. 国際活動の推進
  10. 医療保険制度の充実に向けた取り組み
  11. 介護保険制度の充実に向けた取り組み
  12. 地域医療提供体制の確立・再生
  13. 医療関係職種等との連携及び資質の向上
  14. 医業税制と医業経営基盤の確立
  15. 日本医師会年金の運営強化と会員福祉施策の充実
  16. 日本医師会医賠責保険事業の安定的運営
  17. 医療事故調査制度の創設
  18. 日医総研の研究体制の充実強化
  19. 治験促進センターの着実な運営
  20. 女性医師支援センター事業(女性医師バンク)の運営

※事業計画の全文は日医雑誌5月号別冊参照

代表質問

1 日医主導の医師派遣制度を
 宮本慎一代議員(北海道ブロック)からの「日医主導の医師派遣制度を」という質問には,横倉会長が,『医師養成についての日本医師会の提案第三版』で提案した「都道府県地域医療対策センター(仮称)」構想により,医師の配置調整とキャリア形成の双方をプロフェッショナル・オートノミーに基づき,日医が主導出来るとの考えを示した他,都道府県医師会のドクターバンクとの関連付けも考えているとして,未設置の医師会にはその設置を要望した.
 地域医療支援センターについては,日医が「都道府県医師会の関与,地域医療対策協議会との連携を担保した上で,全国への整備及びその活性化を図る」という予算要望活動をしてきたと説明.国が組織的に医師を派遣することも即効性ある対策として有効だとし,「地域医療支援センターの充実と国による医師派遣を現時点の偏在対策の大きな柱とし,将来目標として日医案の実現を目指すことで,医療界主導による医師偏在の解消と適正配置を行う恒久的な仕組みづくりが出来ると確信している」と述べた.

2 地域医療再生基金の平成二十四年度補正予算による積み増し分に係る在宅医療の整備について
 鉾之原大助代議員(九州ブロック)からの地域医療再生基金の平成二十四年度補正予算による積み増し分に係る在宅医療の整備推進についての質問には,中川俊男副会長が,二十四年度補正予算で五百億円の積み増しが行われ,対象事業には,介護と連携した在宅医療の体制整備の支援が含まれ,実施期間は「平成二十五年度末までに開始する事業」に拡大されていると説明.
 在宅医療連携拠点事業については,二十五年度から地域医療再生基金を財源とすることに変更されており,来年度も事業を継続予定のところは,五月に都道府県から提出される地域医療再生計画に織り込む必要があるとして,早急な確認を求めた.
 また,「在宅医療支援フォーラム(三月十七日開催)」をホームページ上に公開するとして,「医師会主体の在宅医療事業へと発展させて欲しい」と述べた.
 更に,「在宅医療についての郡市区医師会アンケート調査」によれば,地域の医療資源,介護資源はさまざまであり,全国一律のモデルではなく,実際に役立つ情報を示していきたいとの考えを示した.

3 日本医学会の法人化への対応について
 木下成三代議員(中国四国ブロック)は,日本医学会の法人化への対応について質問.今村副会長は,日本医学会の分科会の中から,分科会の連合体である日本医学会の法人化を望む声が上がり,二十年の新公益法人制度の施行により,登記のみで誰でも一般社団法人をつくれるようになったのを契機として,一昨年五月,久史麿日本医学会長から,法人化の意向が寄せられたことなど,その経緯と理由について説明した.
 現在,定款・諸規程検討委員会で検討中であり,二十五年度中には具体的な連携に向けた方策が答申される予定だとし,「医療界を分断するような事態にならないよう,法人化後の日本医学会と日医が,いわば車の両輪となって,わが国の医学・医療を牽引していることが,外部から見た時にも分かる関係を構築していくことが重要だ」と述べ,定款改正を伴う場合,最終的な取り扱いは代議員会で決定することになるとして,その際には大所高所からの判断を求めた.

4 医療事故調査委員会について
 紀平幸一代議員(中部ブロック)からの医療事故調査委員会に関する日医案についての質問には,羽生田副会長が回答した.
 同副会長は,まず,これまでの経緯として,昨年九月,全国の医師会から意見を頂くための「たたき台」として,「診療に関連した予期しない死亡の調査機関設立の骨子(日医案)」を示したが,昨年十月の臨時代議員会において,全国の会員の意見を聞いた上でまとめるべきだとの指摘を受けたため,会内に「医療事故調査に関する検討委員会(プロジェクト)」を立ち上げ,改めて検討を重ねていると説明.
 その上で,同副会長は,「今後の議論において一番重要なことは,いわゆる医療事故の調査に警察の介入をいかになくすことが出来るかである」と強調.院内調査に重点を置くことは当然のことであるが,第三者機関の位置付けは結論を示せる状況にはなく,今後も議論を続け,出来るだけ早期に,会員,他の医療関係団体等,社会・国民に受け入れられる制度とするための「最終案」を示したいとした.

5 専門医制度における総合診療医問題について
 茂松茂人議員(近畿ブロック)の専門医制度における総合診療医問題についての質問には,横倉会長が回答した.
 同会長は,まず,日医は「かかりつけ医」こそが「総合医」であるとの立場をとってきたとし,専門医制度の議論を始める基本的な考えとして,専門医制度に国家が関与し,専門医の認定・配置等が国家の管理下に行われ,わが国の医療提供体制の根幹である「かかりつけ医」へのフリーアクセスが制限され,医療提供体制が揺らぐことは絶対にあってはならないと強調.このことを厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」でも主張し,報告書(案)においては,「専門医の認定・更新に当たっては,日医生涯教育制度などを活用」と,日医が中心的な役割を担っていくことが明示されたとした.
 その上で,同会長は,「かかりつけ医」こそが,地域医療を高いレベルに保っているのであり,このために日本の医療は国際的に高い評価を受け,国民皆保険も堅持されているとし,「このかかりつけ医機能の更なる強化のため,生涯教育制度をより充実させ,推進していく」との決意を述べた.

6 医学部新設問題について
 橋本省代議員(東北ブロック)の,医学部新設問題に関する質問に対し,中川副会長は,まず,医師不足には医師の絶対数の不足と,地域間,診療科間の医師の偏在による不足があり,絶対数については,既存医学部の定員増加により,近い将来,必要医師数の充足が見込まれていると説明した.
 自民党の「東北地方に医学部の新設を推進する議員連盟」に対しては,日医の意見を求められた際に,「新設医学部の教員として多くの医師を医療現場から引き抜けば,地域の医師不足が深刻化し,地域医療の崩壊が決定的となること」「自立して診療が可能な医師の養成には十年以上かかり,新設医学部の卒業生が必ずしも地元に残るわけではないこと」を強く主張したと報告.
 医師の地域間偏在と診療科間偏在の解消に向けた具体策の一つが,『医師養成についての日本医師会の提案第三版』で示す「都道府県地域医療対策センター(仮称)」の創設であるとして,日医が医療界を主導して偏在解消に邁進(まいしん)するとの決意を表明した.

7 重症心身障害児の在宅療養に関する日医の今後の方針について
 竹下俊文代議員(東京ブロック)からの,重症心身障害児の在宅療養に関する質問に対して,羽生田副会長は,まず,質問の中で説明された中野区医師会を中心とする「障害児医療的ケア協議会」の取り組みに対して敬意を表した.
 その上で,同副会長は,新生児医療の進歩により,従来なら救命困難とされた症例も救命されるようになった反面,NICUに長期入院する重度身体障害児の増加が,NICUの慢性的な満床状態の一因となっており,後方支援として期待されるGCU病床の整備も追いつかない状況にあることを説明.
 重症心身障害児対策については,制度の縦割りと硬直化により,迅速かつ弾力的な運用が阻害されている実態があり,現在,日医の「周産期・乳幼児保健検討委員会」で,「成育」をキーワードに,障害児施策を含む施策について幅広く検討を行っており,今後は,成育医療という視点から,次世代の健全な育成のためにあるべき対策を明らかにし,会内のコンセンサスを得て,総合的な施策として国にその実現を働き掛けていく考えを示した.

8 平成二十五年度税制改正後の医療における消費税・事業税について
 田畑陽一郎代議員(関東甲信越ブロック)の平成二十五年度税制改正後の医療における消費税・事業税に関する質問には,今村副会長が回答した.
 ゼロ税率と軽減税率のどちらを求めていくかとの問いに,「まずは,課税の制度に転換することが最重要と考えている」と述べ,遅くとも消費税率一〇%引き上げ時には,抜本的解決として,ゼロ税率ないし軽減税率により,仕入れ消費税が控除出来る制度へ転換することを目指しているとした.
 軽減税率については,あくまで患者負担を増やさない税率であることを強調し,「具体的には診療報酬へ消費税分として上乗せしたとされる一・五三%が一つの目安になる」との見方を示した.
 控除対象外消費税問題が課税化により解決した場合,事業税の特例措置に影響が及ぶのではないかとの懸念には,「社会保険診療が低廉な公定価格であるのは,公共性・非営利性の高い事業として事業税非課税を前提としているからである」と述べ,事業税については,消費税の問題とは別に非課税措置を恒久措置とするよう強く要望していくとした.

個人質問

種々の質問・要望に対して,理事者側から詳細に回答(写真)1 医療にかかわる控除対象外消費税問題の根本的解決
課税制度は「患者に新たな負担」を強いるものではない!!

 小尾重厚代議員(長崎県)の,医療にかかわる消費税を課税化することは隠れた負担を表に出すだけで,患者に新たな負担を強いるものではないとの指摘には,三上裕司常任理事が回答した.
 同常任理事は,指摘に同意した上で,中医協消費税分科会では,現行の非課税制度について,支払側委員も含めて,「非課税制度は不透明かつ不合理」との認識が共有されるようになったことを報告.患者負担を増やさない形で,ゼロ税率などの課税制度へ改善するという日医の従来からの主張について,保険者を始め広く国民から理解を得る素地が整ってきているとした.
 消費税率八%引き上げ時には,消費税増税法で,診療報酬等の医療保険制度の中で手当てすることになっている点については,「通常の診療報酬改定とは別建てで行い,また従前とは異なる適切な方法による手当を要望していくつもりである.この際の財源は,消費税増収による財源を充てることを主張していく」と強調.今まで以上に丁寧に,控除対象外消費税問題の不合理・不透明さを訴えて,理解を求めていくとの姿勢を示した.

2 地域産業保健センターの今後について
 近藤太郎代議員(東京都)の地域産業保健センター事業のあり方に関する質問に対しては,道永麻里常任理事が回答した.
 同常任理事は,昨年実施したアンケートの結果から,現場が混乱している状況を説明し,日医産業保健委員会において,「地域産業保健センター」「産業保健推進センター」「メンタルヘルス対策支援センター」を一括運営するべきとした中間答申をまとめ,労働基準局長に要望書を提出したことを報告.一括運営とすることで,(1)四十七都道府県に推進センターが復活する(2)労働者健康福祉機構の事業として安定的・継続的な事業となる(3)事業一体化により予算増額が見込まれる(4)経理事務を機構が行うことで医師会は本来業務に専念出来る─などの利点があると説明した.
 同常任理事は,国でも検討会を開催し一括運営について検討する予定であるとし,長年,産業保健事業に取り組んできた医師会の意見が十分反映出来るよう,引き続き行政に働き掛ける考えを示した.

3 地域医療における在宅医療の問題点について
 竹村恵史代議員(奈良県)の地域医療における在宅医療の問題点に関する質問に対しては鈴木邦彦常任理事が回答した.
 同常任理事は,「超高齢社会を迎えて病院以外の看取りの場が必要になるとされているが,国は財政状況の悪化により民間の力を借りてサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を大量に建設し,事実上の施設化を図っている」と説明.その問題点として,サ高住の推進主体が厚労省と国土交通省の共同事業であることを指摘し,国交省が業種に関係なく建設を認めているため,必要最小限のサービスしか整備されていない施設が増え,中医協でも不適切事例が問題視されているとした.
 その上で,同常任理事は,「在宅での看取りは,かかりつけの医師を中心に行われるべきであり,そのためには,郡市区医師会が行政と連携して在宅医療をコントロールする仕組みづくりが必要である.各医師会には在宅医療を武器として地域包括ケアの中心的存在になって頂きたい」との考えを示した.

4 医療基本法(仮称)の制定は慎重に
 佐藤和宏代議員(宮城県)の医療基本法(仮称)の制定に向けた日医の活動に関する質問には,今村定臣常任理事が回答した.
 同常任理事は,「医療基本法の制定」を目指して平成十八年から検討を重ねていることを説明する一方,日医代議員への周知方法が必ずしも十分ではなく,医療基本法に対し理解が進んでいなかった点については,遺憾の意を表明.現段階では,「医療基本法 草案」は会内の委員会の報告書に過ぎず,まずは,医師会,医療界内の問題意識を高めるため,シンポジウム等の開催を全国の医師会に依頼するとともに,医師会内部での議論を深めることを目的に,日医で担当理事連絡協議会を四月十七日に開催する予定であることを説明した.
 また,今後については,「医療基本法の問題は,患者・国民のみならず,医療提供者も当事者として議論の中心にあるべきであり,全国の医師会,会員の意見を踏まえながら,拙速となることなく,着実に進めていきたい」とした.

5 生活習慣病薬のスイッチOTC薬化について
 小池哲雄代議員(新潟県)の生活習慣病薬のスイッチOTC薬化に関する三つの質問には,鈴木常任理事が回答した.
 スイッチOTC薬として承認されたエパデールに対する今後の対応については,「まず医療機関を受診し,中性脂肪値が一五〇以上三〇〇mg/dl未満で,医師が当面通院治療の必要がないと診断した場合に限って認める」という原則が定められていることを説明し,このルールがしっかりと守られるよう,十分に注視していく考えを示した.
 次に,生活習慣病治療薬に対するスイッチOTC化への今後のスタンスについては,長期間の服用と全身管理が必要となる可能性のある生活習慣病こそ,かかりつけ医の診断と治療が不可欠であり,生活習慣病治療薬はスイッチOTC化に馴染むものではないと強調.今後も,生活習慣病治療薬のスイッチOTC化は認めることは出来ないと述べた.
 更に,スイッチOTCのあり方については,スイッチOTC化しても良い薬は,「自覚症状があって,比較的短期間の服用でそれが改善し,自ら服用の中止を判断出来るもの」との考えを説明.引き続き,このスタンスで,薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会の審議に臨んでいくとした.

6 審査委員等の年齢上限緩和について
 社会保険や国民健康保険の審査委員等の委嘱時の年齢上限の緩和を求める三宅直樹代議員(北海道)の要望については,藤川謙二常任理事が回答した.
 同常任理事は,七十歳という年齢の上限について,(1)国保連合会では,七十歳以上の場合は,国保連合会と都道府県医師会,そして任命権者である都道府県と協議の上で判断することになっていること(2)支払基金では「やむを得ない場合にあっては,候補者ごとに理由を付して基金本部宛て内議すること」との留意事項があること─を説明.七十歳はあくまでも原則であり,年齢を理由に一概に認めないものではないとして,理解を求めた.
 その上で,同常任理事は審査委員の選任は地域の実情に応じて対応すべきとの考えを示し,「現場で何か問題があれば,日医に知らせて欲しい」と述べた.
 一方,指導医療官の問題については,中医協において,厚労省の担当室長が指導医療官不足について,「実態を踏まえながら,改善に向けて努力していく」との考えを示していることを紹介.今後の厚労省の取り組みを見守っていく考えを示した.

7 有床診療所の存続について
 友松孝代議員(愛媛県)の,有床診療所の存続についての質問には,葉梨之紀常任理事が回答した.
 同常任理事は,有床診療所が地域に密着した入院施設として地域医療を支えているとして,日医では,今年二月に田村憲久厚労大臣宛てに,(1)医療法における有床診療所の定義の見直し(2)有床診療所の新規開設に係る適切な運用(3)診療報酬の見直し─を求める要望書を提出したことを報告した.四月には,厚労省の若手職員が,兵庫県と鹿児島県内の有床診療所を視察する予定であることにも言及し,関係者に現場を見てもらうことが重要だとした.
 また,前回の診療報酬改定において,有床診療所の状況を把握せずに,簡素化の観点で栄養管理実施加算を入院基本料に包括化したため,現場に混乱を招いているとした上で,来年四月以降,管理栄養士が雇用出来ないと入院基本料そのものが算定出来なくなることから,出来るだけ早い段階で,次回改定の方向性を示したいとした.

8 統合医療推進は許されない
 白石昌之代議員(福岡県)からの,統合医療の推進に関する質問に対しては,小森貴常任理事が回答.日医は,「統合医療」が混合診療全面解禁の引き金になりかねないとして懸念を表明しており,厚労省の「統合医療のあり方に関する検討会」でも,「統合医療」という言葉に「医療」という文字が付いていることの違和感や,「統合医療」に名を借りてエビデンスのない相補・代替医療まで保険診療に入れることの問題点を指摘していると報告した.
 また,検討会の「これまでの議論の整理」では,「『統合医療』」は多種多様かつ玉石混交であり,知見が十分に得られているとは言えない状況である.今後は医学的・科学的知見を健康被害情報も含めて収集し,患者・国民・医療関係者に対して公的機関のホームページ等から情報の提供を行うべき」としていると説明.日医としては,医学的根拠の蓄積がないまま「統合医療」を推進することは,学術専門団体として絶対に認めることは出来ないとした.

9・10 民間保険会社による「保険金直接支払いサービス」と「現物給付型保険」について
 松家冶道代議員(北海道)と河村康明代議員(山口県)からの,民間保険会社による「保険金直接支払いサービス」と「現物給付型保険」についての質問には,石川広己常任理事が回答した.
 同常任理事は,金融庁の金融審議会のワーキンググループでの議論の中身や金融庁の見解等について説明した上で,今のところは,生命保険契約における現物給付を容認する流れにはなっていないとの認識を示した.厚労省に確認したところ,金融庁から相談を受けておらず,「医療における商品としては成立しづらいのではないか」とのことであったとした.
 その一方で,「保険契約における現物給付が認められれば,混合診療によって民間保険で自由診療を行い,公的保険で保険診療を受けるという流れをつくりかねない危険性がある.サービス内容の審査を保険会社が行うため,不払いが発生する恐れもある.また,フリーアクセスが阻害される可能性も否定出来ない」との警戒感を示し,民間保険から公的保険である国民皆保険が侵食されることがないよう,TPP交渉の行方も注意深く監視しながら,必要な対応をしていく考えを示した.

11 大規模災害時相互支援協定について
 泉良平代議員(富山県)からの,発災直後から救護が効率的に出来るよう,各地域の医師会連合会内などでの大規模災害時相互支援の協定締結を促進すべきとの提案に対しては,石井正三常任理事が回答した.
 同常任理事は,まず,東日本大震災直後に引き続き,平成二十五年度にも,都道府県医師会と行政との災害時の支援協定に関するアンケート調査を行い,その後の見直しや新規締結状況を把握する予定であることを報告.その際には,医師会同士やブロック内の協定の締結状況についても調査する考えを示した上で,「災害時の支援協定はJMAT活動の基本的な条件であり,更に推進していきたい」とした.
 また,救護活動の際の身分補償については,「医師会と行政」の協定が重要になるとし,協定の形骸化を防ぐための定期的な見直しを求めた.
 更に,大災害への準備の具体的な方針や予定については,「救急災害医療対策委員会」の下に設置している「災害医療小委員会」で検討するとともに,都道府県医師会担当理事連絡協議会を開催して情報の共有化を図りたいとした他,平成二十五年度の後半に,南海トラフ地震を想定し,インターネット衛星を利用した実験,訓練を行う予定であることを説明した.

12 大規模災害時における死体検案業務について
 山田和毅代議員(和歌山県)からの,大規模災害時における死体検案業務に対する日医の考えを問う質問並びに『大規模災害時検案標準活動マニュアル』の作成を求める要望には,高杉敬久常任理事が回答した.
 次なる大規模災害時への備えは,一刻の猶予も許されない課題であり,発災時における検視・検案業務への医師派遣について,しっかりとした指揮・命令系統の確立が必須であると指摘.現在,警察庁とその対応について協議中であるとするとともに,今後は,日本歯科医師会,日本法医学会などとも連携し,具体的な計画策定を急ぎ,公表する意向を示した他,マニュアルの策定についても検討する意向を示した.
 また,死体検案を正確に行うことが出来る医師を一人でも多く育てるため,平成二十四年度より「死体検案研修会」を開催していることを報告.将来的には全国の医師会で開催してもらうことで,検案業務を円滑に遂行出来る素地が整うとして,都道府県医師会に対し,更なる協力を求めた.

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