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第1240号(平成25年5月5日) |
第194回世界医師会(WMA)バリ中間理事会
─石井常任理事が理事会副議長に再任される─
副議長として発言する石井常任理事 |
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第百九十四回世界医師会(以下WMA)バリ中間理事会が四月四〜六日,インドネシアのバリ島で開催され,三十四医師会及び国際女医会等,約百五十名が参加した.
日医からは横倉義武会長,石井正三常任理事,畔柳達雄参与が出席した.また,日本医師会・若手医師ネットワークJDN(Junior Doctors Network)として,初めて座光寺正裕医師(佐久総合病院)もこの会議に出席した.
理事会に先立ち,ヘルシンキ宣言改訂,災害医療の作業部会等が開催された.理事会では,冒頭,ナフィシア・ムボイインドネシア保健大臣(武見フェロー一九九〇〜九一年)(写真)による歓迎の辞に続き,役員の改選で石井常任理事が理事会副議長に再任された.
議事では,「医療行為の刑事的処分に関する理事会決議案」が緊急決議として採択されたことが特筆される.
理事会における主な議事内容は以下のとおりである.
(一)社会医学関係
(1)理事会決議された文書
○医療行為の刑事的処分に関する理事会決議
医療行為及び医療に関する意思決定への政府介入に反対.
○シリル・カラバス教授に関する理事会決議
国際法上の基準外の扱いを受けている教授の速やかな本国への帰還を勧告.
○医療行為と患者の安全の標準化に関する理事会決議
非医療分野の業界標準を医療行為に取り入れるEU内の傾向に対し,関連の医師組織にその任務を任せるよう各国政府及び機関に要請.
(2)コメント要請のため各国医師会に回付される文書
○拷問被害者の賠償請求権に関する声明案
拷問被害者の賠償請求権の保証を求めるもの.
○真菌性疾患の診断と管理に関する声明案
真菌性疾患の診断検査と抗真菌療法の処方の最も効果的な提供のための指針.
(3)その他
○ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン
HPVワクチンに関する政策文書の作成.
○女性と少女に対する暴力
女性らに対する差別,暴力の排除に対して実施出来ることの文書化.
○医療データベースの倫理的考察に関する宣言改訂案
患者の非特定情報と特定情報を含む医療データベースの利用.
(4)二〇〇三年採択文書の分類
○SARSに関する決議:アーカイブ化
(二)医の倫理関係
横倉会長とインドネシアの
ナフィシア・ムボイ保健大臣 |
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(1)ヘルシンキ宣言改訂案
弱者グループの保護の強化,被験者保護のための補償問題の明確化,試験後の取り決めに関する具体的条件,倫理委員会の透明性の向上,体系的なプラセボの使用等が主な改訂ポイント.草案は,パブリック・コメント実施後,新たに起草され,八月のワシントン会議を経て,十月の総会での審議に付される.
(2)十月の総会に採択のために付託される文書
○死刑執行の凍結を要請する国連決議に関する声明案
(3)コメント要請のため各国医師会に回付される文書
○女性のヘルスケアに対する権利とHIV母子感染との関わりに関する決議改訂案
国連ミレニアム開発目標(MDGs)の「HIV/エイズ,マラリアその他の疾病の蔓延(まんえん)の防止」を追加.
(4)作業部会検討文書
○人間中心の医療に関するWMA声明案
疾病の抑制,科学と人間との調和に基づき,健康の向上,臨床現場でのより良いコミュニケーション,人の尊厳に対する尊敬と責任について,個人及び地域レベルにおける理解を深めることを求める.
(三)財務企画関係
(1)今後の会議開催日程
二〇一三年十月フォルタレザ総会(ブラジル),二〇一四年四月東京中間理事会,十月ダーバン総会(南アフリカ),二〇一五年十月モスクワ総会(ロシア),二〇一六年四月ブエノスアイレス中間理事会(アルゼンチン),十月台北総会(台湾)
(2)ヘルシンキ宣言五十周年に関する準備委員会
二〇一四年にフィンランドで採択五十周年記念式典を開催予定.
(3)災害対策と医療に関する作業部会
アンケート結果報告及び情報の共有化と,災害医療トレーニングプログラムの策定について言及.今後二〜三年ごとに,同様の調査の継続を提言.
(4)WMA元会長,理事会議長のネットワーク
政策議論等へのアドバイスの提供を目的としたネットワークの構築.
(5)JDN(Junior Doctors Network)
二〇一一年四月WMA理事会により,世界初の若手医師の国際的組織として承認された組織.本会のJDNとして座光寺医師が初めて参加した.
(6)新規加盟申請
モンテネグロ医師会
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