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第1246号(平成25年8月5日) |

侠の精神

「日本人には侠の精神が欠けている.」
かつて日中の違いについて某月刊誌に載った司馬遼太郎氏と陳舜臣氏との対談の一節だ.
侠は友情のような横の関係で,上下の関係を重視する縦社会の日本では発達しなかった.司馬氏は,日本では消極的とはいえ侠の精神があるのは医師会くらいではないかとも述べている.縦社会では分を守れば身は保てるが,中国ではそれがないので,横のつながりを重視し,侠が働くという.
日本の学閥や医局講座制は縦社会の典型だし,この中で分を守れば身は保てた.医師は開業すると学閥,医局との関係が薄れるので,医師会が横の関係をつくってきた.残念ながらこれまで日本の学会は縦社会のヒエラルキーから脱却出来ず,横の関係を築けていない.加えて自らの専門分野しか興味がない勤務医を始めとし,医師会活動に無関心な医師が増えているようにも思える.
そのような中,医師会が積極的に侠の精神を発揮し,横の関係を束ねていけるのだろうか.
更にこれからの超高齢社会では,多職種との横の連携をつくり,地域包括ケアを進めることが課題となる.
縦社会を横切る侠の精神こそ地域医師会に求められているのではないだろうか.
(撥)
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