日医ニュース
日医ニュース目次 第1247号(平成25年8月20日)

武見フェロー帰国報告会
2012〜2013年度のフェロー3名が研究成果を報告

武見フェロー帰国報告会/2012〜2013年度のフェロー3名が研究成果を報告(写真) 二〇一二〜二〇一三年度の武見フェローである後藤あや氏(福島県立医科大学公衆衛生学教室准教授),堀和一郎氏(三重大学医学系研究科医学・看護学教育センター/整形外科学助教),及び内山周作氏(日医総研)による帰国報告会が七月二十三日,日医会館で行われた.
 武見プログラムは,一九八三年に,武見太郎元日医会長の「医療資源の開発と配分」の構想に着目したハーバード大学が,同大学公衆衛生大学院に日医の協力の下設置した学際的研究プログラムである.
 報告会は石井正三常任理事の進行により開始され,横倉義武会長始め日医役員,日本製薬工業協会及び会員企業担当者,国際保健検討委員会委員,武見フェローOB,日医総研研究員ら五十名以上が出席し,報告並びに活発な質疑応答が行われた.
 冒頭あいさつした横倉会長は,武見フェローのネットワークの強化を図り,国際保健において更に貢献していけるよう,日医として今後も武見プログラムを支援していく考えを示した.そして,財政面から当プログラムを長年にわたり支え,三十周年記念シンポジウム(ボストンで十月開催予定)に対する支援も行った日本製薬工業協会関係者に感謝の意を表明した.
 報告会では,まず,後藤氏が「科学と地域の架け橋─福島市における育児支援」と題して,東日本大震災・原発事故による放射線の影響から,子どもの甲状腺がんのリスクを懸念する親への対応について説明.親の不安への対応を図り,長期的な対応システムを構築・強化していくためには,「早期育児支援や保健師の研修の充実」「母親のメンタルヘルスや検診での育児相談の内容の分析」「保健師との対話の機会増」「保健師のヘルスリテラシー(医療情報活用能力)の向上」「より分かりやすい伝達システムの構築」が必要であると強調した.
 堀氏は,「中低所得国における外傷サーベイランスシステム設立」をテーマに報告.アフリカのザンビアでは交通事故外傷が多く(世界第十一位),危険因子(シートベルト非着用等)のコントロールが欠如していることから,費用対効果を視野に入れた介入が不足していることに着目.病院における外傷サーベイランスシステムを設立するためのプロジェクトを研究と教育の双方向で進めているとした.
 内山氏は,「医療における大規模データベースの個人情報保護と利活用のための環境整備に係る研究」について報告.米国における患者情報の電子化と情報漏洩(ろうえい),医療版個人情報保護法とも言えるHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act of 1996)が医学研究に支障をもたらす原因等について検証した上で,日本での法制化における応用方法や日医の取るべき戦略について説明した.

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