日医ニュース
日医ニュース目次 第1253号(平成25年11月20日)

2013年世界医師会(WMA)フォルタレザ総会開催される
─ヘルシンキ宣言改訂案を採択─

WMA総会に出席する川島理事

 世界医師会(以下WMA)総会が十月十六〜十九日,ブラジルのフォルタレザで開催され,四十七医師会及び赤十字国際委員会等約二百五十名が参加した.
 日医からは,川島周理事(横倉義武会長の代理)がWMA理事,石井正三常任理事がWMA理事及び理事会副議長,畔柳達雄参与が医の倫理委員会のアドバイザーとして,それぞれ出席.また,日本医師会Junior Doctors Network(JMA-JDN)から,阿部計大(手稲家庭医療クリニック),三島千明(北海道家庭医療学センター)両医師が参加した.
 総会においては,二年間にわたる改訂作業を経て草案されたWMAヘルシンキ宣言改訂案が採択されたことが特筆される.また,緊急決議として化学兵器の禁止に関するWMA決議,シリアのヘルスケア状況に関するWMA決議の二件が採択された.
 学術集会は,「生活習慣と非感染性慢性疾患」をテーマに開催され,石井常任理事が「アルコールと公衆衛生」のセッションで座長を務めた.また,WMA新会長として,マーガレット・ムンゲレラ氏(ウガンダ医師会)が就任し,次期会長にはザビエル・デュー氏(フランス医師会)が選出された.その他,アジア大洋州医師会連合(CMAAO)加盟医師会参加者との懇談会,ウガンダ医師会と意見交換を実施した.
 総会における主な議事内容は以下の通りである.

一,総会での審議結果

(一)医の倫理関係
 (1)新規採択文書
 〇死刑執行の凍結を要請する国連決議に関するWMA声明
 (2)改訂案が採択された既存文書
 〇WMAヘルシンキ宣言
 本改訂案は,二年間にわたる作業部会,専門家会議,パブリックコメント等を経て草案された.日医はアジアを代表し改訂作業部会の一員として,今回の改訂にも大きく関わった.
 二〇一三年改訂版の焦点は,研究に関与した弱者集団の保護の強化,研究参加後に損害を受けた被験者による適切な補償と治療の受け取り,バイオバンクなど研究試料の再利用に関するインフォームド・コンセントに関する言及,被験者に対する研究結果の通知,研究後の取り決めの拡大(試験中に有益であると証明された医学的措置へのアクセスの保証),研究倫理委員会の権限強化である.
 二〇一四年は同宣言採択五十周年に当たることから,五月下旬から六月上旬に,ヘルシンキ(フィンランド)において,記念事業を行うこととなっている.
 〇女性のヘルスケアに対する権利とHIV母子感染との関わりに関するWMA決議
 〇行方不明者の法医学調査に関するWMA声明
 (3)コメントを要請する各国医師会回付文書
 〇人間中心の医療に関するWMA声明改訂案
(二)社会医学関係
 (1)二〇一三年バリ中間理事会採択文書の総会採択
 〇医療行為の標準化と安全に関するWMA決議
 〇医療行為の刑事的取り締まりに関するWMA決議
 (2)新規採択文書
 〇化学兵器の禁止に関するWMA緊急決議
 〇シリアのヘルスケア状況に関するWMA緊急決議
 〇拷問被害者のリハビリテーションに関するWMA声明
 〇ヒトパピローマウィルスワクチンに関するWMA声明
 〇真菌性疾患の診断と管理に関するWMA声明
 〇人間の生まれながらの性の多様性に関するWMA声明
 〇ブラジル医師会の支持に関するWMA決議
 (3)コメントを要請する各国医師会回付文書
 〇婦女子に対する暴力に関するWMA決議実施のための提案
 〇医療従事者の国際移住の倫理ガイドラインに関するWMA声明案
 〇人間の生殖細胞の非商品化に関するWMA決議改訂案
 〇リアリティテレビ番組に関与する医師の倫理的影響に関するWMA声明案
 〇未成年者の人身売買と違法な養子縁組の防止における医師の役割に関するWMA声明案
 〇未成年者の問題も含む美容処置に関するWMA声明案
 〇健康の社会的決定要因と健康の公正に取り組む医師と各国医師会の役割
(三)財務企画関係
 (1)今後の開催日程
 二〇一四年:中間理事会四月二十四〜二十六日(東京),総会十月ダーバン(南アフリカ)
 二〇一五年:中間理事会四月オスロ(ノルウェー),総会十月モスクワ(ロシア)
 二〇一六年:中間理事会四月ブエノスアイレス(アルゼンチン),総会十月台北(台湾)
 (2)新規加盟医師会
 モンテネグロ医師会,カメルーン医師会,スーダン医師会,イタリア医師会(百六加盟医師会)
(四)学術集会
 「生活習慣と非感染性慢性疾患」がメインテーマ.石井常任理事が「アルコールと公衆衛生」のセッションで座長を務めた他,「健康の社会的決定要因」「健康的な食習慣」「運動」「喫煙と公衆衛生」のセッションで九題の講演が行われた.
(五)準会員会議
 JDNの活動報告 十一カ国二十一名(JMA-JDN二名)のJDNが参加.

DoH作業部会メンバーと石井常任理事,畔柳参与

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