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第1258号(平成26年2月5日) |
B層を狙え
佐々木実氏著『市場と権力─「改革」に憑(つ)かれた経済学者の肖像』は,そのサブタイトルが示すように,小泉内閣で大臣も務めたT氏を取り上げた力作です.
ここで紹介したいのは,郵政民営化を国民に支持してもらうために広告代理店が取った広報戦略に関する記載です.具体的には,国民をIQの高い層と低い層に分け,更にIQが高くて構造改革に賛成しそうなA層,IQが低くて構造改革に賛成しそうなB層,IQが高くて構造改革に否定的なのは「抵抗守旧派」と区分けしました.ちなみにIQが低く,構造改革を否定する層は最初から相手にしていません.
広報のターゲットにしたのはB層で,主婦,子ども,シルバー層など,「具体的な事は分からないが小泉首相のキャラクターを支持する層」だと書かれています.この広報戦略で,郵政民営化はその内容はよく知らない多くのB層の支持を得ました.この戦略はその後も使われているそうです.
最近,テレビのCMに「民間の医療保険など入らなくてもよい」とささやく黒鳥がでています.我が国では,高額療養費制度のおかげで,入院,手術となっても保険医療費の自己負担はそれほどかかりません.しかし,高額療養費制度を知る国民はまれです.
高額な医療費負担を軽減する制度の認知度が低いことを逆手に取って,悪玉キャラの黒鳥を使い,民間の医療保険に勧誘するこのCMもB層を狙ったのでしょうか.
(撥)
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