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第1264号(平成26年5月5日) |
4月9日
国家戦略特区における医学部新設について
国家戦略特別区域諮問会議から,三月二十八日付けで,「医学部の新設に関する検討」の今後の方向性が示されたことを受け,横倉義武会長は,国家戦略特区における医学部新設について,日医の見解を公表した.
同会長は,医師不足は医師の絶対数の不足と偏在からなる問題であり,医師の絶対数の不足については,二〇〇八年に政府が医師数増加の方針を打ち出し,医師養成数の増加が図られた結果,二〇〇八〜二〇一四年度の入学定員累計増員数は千四百四十四人となり,新設医学部の定員数を従来の百人とすると,約十四医学部分に相当すると説明.これにより医師数の絶対数確保には一定のめどがつきつつあるとの考えを示した.
また,今後は,医師の地域偏在,診療科偏在の解消が急務であるが,医学部新設は,医師の地域偏在を深刻化させることが危惧されるため,「日医は,従来より医学部新設には慎重な対応をするよう政府に要請をし続けてきた」と述べた.
同会長は,日医の推計では,医師数は二〇二五年に現在のOECD平均に到達すると見込んでおり,現行の入学定員増の対応で,医師数の確保には一定のめどが立っているとした.また,これから医学部を新設しても,自立して診療が可能な医師を養成するまでには,十年以上かかるとした他,医学部の教員は多くが医師であり,教員を医療機関から募集すると,その地域及びその周辺では医師不足の引き金となると指摘.更に,国家戦略特区で提言しているような医学部で,医学生が最低限履修すべき教育内容である「医学教育モデル・コア・カリキュラム─教育内容ガイドライン─」を満たすことが出来るのかについても懸念を示した.
国家戦略特区における医学部新設の提案として,成田市・国際医療福祉大学から「国際医療学園都市構想」があることについては,海外からの留学生を含め,国際舞台で医療の担い手となる人材は,医学部の入学定員百四十人のうち二十人のみで,百二十人は地域医療の担い手として教育されるとのことであり,文部科学省も指摘しているように,社会保障制度への影響が懸念されるとした.
その上で,地域医療の現場からも医学部新設反対の声が上がっていること,また,四月八日には「全国医学部長病院長会議は国家戦略特区での医学部新設に反対する」との声明を出したことにも言及した.
同会長は,今後の医師数の見通しについて,「二〇二五年には三六万二千人(約一・三倍),人口千人当たり医師数は三・〇人(約一・四倍)になると推計しており,日医等の調査によれば,現状の必要医師数は約一・一倍,受療率等から推計した将来の患者数は約一・二倍であるので,医師数が約一・三倍になれば,今後の環境変化(医療の高度化,女性医師の増加など)や,勤務医の負担軽減にも対応出来る」と述べた上で,改めて,「医学部の新設は,現在,必要という状況ではない」と明言した.
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