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第1276号(平成26年11月5日) |
2014年世界医師会(WMA)ダーバン総会
エボラウイルス病に関する緊急決議を採択
世界医師会(以下WMA)総会が十月八〜十一日,南アフリカ共和国のダーバンで開催され,四十七医師会及び赤十字国際委員会等約二百五十名が参加した.
日医からは,横倉義武会長(WMA理事),松原謙二副会長(WMA理事),石井正三常任理事(WMA理事及び理事会副議長),川島周監事が出席した他,日本医師会JDN(Junior Doctors Network)から,阿部計大,三島千明両医師が参加した.
本総会では,エボラウイルス病に関する緊急決議が採択された他,WMA新会長として,ザビエル・ドゥー(フランス医師会国際関係代表団会長)が就任し,次期会長にはサー・マイケル・マーモット(イギリス医師会会長)が選出された.
また,開催期間中,アジア大洋州医師会連合(CMAAO)加盟医師会参加者との懇談会,アメリカ医師会,韓国医師会と意見交換を実施した.
総会における主な議事内容は以下のとおりである.
総会での審議結果
○エボラウイルス病に関する緊急決議
西アフリカにおけるエボラウイルス病の大流行は,これまでの流行よりもはるかに制御が困難であることが判明している状況の下,WMAでは全ての国に対し,エボラウイルス病の流行と闘うための支援強化に全力を傾けるよう要請.更に,医療従事者等を感染から守り,交差感染のリスクを低減するための個人用保護具の速やかな供給を国際社会に求め,各国政府や地方自治体,WHO機関等の全ての関係者に感染対策の手段について十分な訓練に注力するよう勧告を行っている.
当文書はイギリス医師会より理事会に緊急決議案として上程され,理事会決議文書として採択された後,総会において総会文書として採択された.
また,総会ではエボラウイルスの治療に際して,ヘルシンキ宣言第三十七項の内容に準拠することを医師に求める「未承認の治療とエボラウイルスに関するWMA総会緊急決議」も採択された.
なお,この件に関して横倉会長は,人道支援の立場から日本政府がWHOやUNICEF等の国際機関に対し緊急無償資金協力を行ったことを紹介した.
(一)医の倫理関係
一.継続審議
(1)作業部会による再起草後パブリック・コンサルテーションに付される文書
○ヘルスデータベース及びバイオバンクに関する倫理的考察に関するWMA宣言案
(2)作業部会により再起草される文書
○人間中心の医療に関するWMA声明案
(3)事務総長による検討の後,委員会に再提出される文書
○代理意思決定者の用語の定義
(二)社会医学関係
一.新規採択文書
○美容処置に関するWMA声明
○車の排出ガスによる大気汚染防止に関するWMA声明
○独房監禁に関するWMA声明
○暴力的状況下にある医療従事者の保護に関するWMA宣言
○カタールにおける移民労働者の健康と安全に関するWMA(緊急)決議
○武力衝突時及びその他暴力的状況における医療の倫理原則
二.改訂案が採択された既存文書
○医師の国際雇用のための倫理指針に関するWMA声明改訂
○ヒト生殖材料の非商品化に関するWMA決議改訂
○水と健康に関するWMA声明改訂
三.コメントを求めるため各国医師会に回付される文書
○ストリート・チルドレンへの医療支援提供に関するWMA声明案
○化学兵器に関するWMA声明案
○アルコールに関するWMA国際宣言案
○モバイルヘルスに関するWMA声明案
○医療従事者に対する暴力と闘うワールドデーに関するWMA声明案
(三)財務企画関係
一.今後の開催日程
二〇一五年:理事会四月オスロ(ノルウェー),総会十月モスクワ(ロシア)
二〇一六年:理事会四月ブエノスアイレス(アルゼンチン),総会十月台北(台湾)
二〇一七年:理事会四月開催地未定,総会十月シカゴ(米国)
二〇一八年:理事会四月開催地未定,総会十月レイキャビク(アイスランド)
二.新規加盟医師会
ケニヤ医師会,レソト医師会,ザンビア医師会,ルワンダ医師会,ギニア医師会(百十一加盟国医師会)
(四)学術集会
「ミレニアム開発目標(MDGs)以降の健康決定因子」をテーマとして講演が行われた.
(五)準会員会議
一.準会員会議議長選挙
横倉会長の指名により,二〇一四〜一六年を任期とする準会員会議議長にアメリカ医師会のジョセフ・ヘイマン医師が就任した.
二.JDN代表による活動報告及び文書案の提出
(1)理事会審議に付される文書
○核兵器に関するWMA声明改訂案
○備蓄天然痘ウイルスの廃棄に関するWMA声明案
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