日医ニュース
日医ニュース目次 第1281号(平成27年1月20日)

日医定例記者会見

平成26年12月24日
東京圏国家戦略特区における医学部新設に3団体合同で反対を表明

日医定例記者会見/平成26年12月24日/東京圏国家戦略特区における医学部新設に3団体合同で反対を表明(写真) 第二回東京圏国家戦略特別区域会議(昨年十二月九日開催)において,千葉県成田市に国際的な医療人材の育成のための医学部を新設するために,その設置が決まった「成田市分科会」の第一回会合が開催(十二月十七日)されたことを受けて,横倉会長は十二月二十四日,久史麿日本医学会長,全国医学部長病院長会議役員らと共に合同記者会見を行い,医学部新設問題に対する日医の見解を改めて説明した.
 横倉会長は,まず,医師不足の問題は,医師の絶対数の不足と偏在からなる問題であるとして,二〇〇八年に政府が医師養成数増加の方針を打ち出して以降,二〇〇八〜二〇一五年度の入学定員累計増員数は千五百九人となっており,その数は新設医学部の定員数を従来の百人とすると,約十五医学部分の増加に相当すると指摘.これにより,医師数の絶対数確保には一定のめどがつきつつあり,今後の環境変化や,勤務医の負担軽減にも対応できるとの考えを示した.
 更に,二〇一〇年以降毎年千人を超える地域枠が増員されてきたことから,二〇一六年以降は毎年,千人以上の医師が地域枠として全国の現場に出ていくことになるとし,これらの医師たちの就業状況を見た上で,医学部養成定員の議論をすべきであるとした.
 また,同年齢のうち医師になる割合について,分子を医師国家試験合格者数,分母を二十五歳人口として算出した場合,一九七六年には四百三十七人に一人であったが,二〇一四年には百六十二人に一人,このまま推移すれば,二〇三〇年には百三十二人に一人が医師になること,二〇一三年度における医師一人当たりの養成費用は医学部六年間で約一億円にもなることを説明.「医学部新設には実習設備設置等の費用がかかることからもその影響は極めて大きく,若年層を始めとした人口が減少する中においては,養成費用も含めた議論も必要である」と強調.
 その上で,横倉会長は,成田市と国際医療福祉大学が提案する「国際医療学園都市構想」についても言及.医学生が最低限履修すべき教育内容である「医学教育モデル・コア・カリキュラム─教育内容ガイドライン─」を満たすことができるのか疑問であるとするとともに,医学部新設については,全国医学部長病院長会議からも反対声明(平成二十六年四月)が出される等,地域医療の現場でも反対の声があるとして,特区における医学部新設については,慎重な対応を求めた.
 久日本医学会長は,当日開催された日本医学会幹事会の場において,東京圏国家戦略特区会議における医学部新設について議論した結果,全員が反対とする意見であったことを報告.急激な医学部定員増により医学生の質が低下しているというデータが医学部長病院長会議から出されているが,「質の悪い医師が増えることは国民にとっても幸せなことではない」として,これ以上の医師養成数の増員には強く反対であるとした.
 甲能直幸全国医学部長病院長会議副会長は,全国医学部長病院長会議としても国家戦略特区における医学部新設には反対であるとの考えを示した上で,その問題点として,(一)特区に求められる「既存の医学部とは次元の異なる,際立った特徴を有すること」を満たす要件((1)国際的な医療人材の育成(2)グローバルスタンダードに対応した医学部の新設)の意義が理解できない,(二)医学部新設には莫大な費用がかかり,我々も含め国民の負担が非常に大きい,(三)医療現場に混乱を及ぼすことが予想される─の三つがあると指摘.特区において医学部を新設する目的とされているものは,既存の医学部・医科大学でも十分対応可能であるとした.
 その他,当日は,会見に同席した寺野彰全国医学部長病院長会議相談役,河野洋一同相談役,小川彰同顧問からも反対意見が述べられた.

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