日医ニュース
日医ニュース目次 第1282号(平成27年2月5日)

国民医療を守るための総決起大会
「適切な医療・介護財源の確保」と「医療に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択

 国民医療を守るための総決起大会(主催:国民医療推進協議会,協力:東京都医師会)が1月15日,都内で開催された.
 当日は,約750名(国会議員49名,代理54名,計103名含む)の参加者が集い,参加者全員の総意として,「適切な医療・介護財源の確保」と「医療に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議が採択された.

国民医療を守るための総決起大会/「適切な医療・介護財源の確保」と「医療に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択(写真) 当日は,今村定臣日医常任理事の司会で開会.冒頭,国民医療推進協議会長としてあいさつを行った横倉義武日医会長は,医療には国民の安全を守り,健康を維持するための規制が設けられていることを指摘した上で,そこを経済優先の名の下に改革しようとするのであれば,毅然と反対の声を上げていく必要があることを強調.「政治家が財政を建て直す役割を担うのと同様,医療従事者には国民の生命と健康を守るという使命があり,国民皆保険という貴重な財産を次の世代につないでいくことは,国民一人ひとりが果たすべき,重大な責務だ」と述べた.
 更に,国民皆保険を堅持し,必要な医療が過不足なく受けられる社会を持続可能なものにしていくためにも,国民との約束である社会保障と税の一体改革を着実に進め,一年半先延ばしにされた消費税が引き上げられるまでの間も,「必要な財源を確保し社会保障の充実に充てること」及び「医療に関する消費税問題の抜本的解決」について,政府に対して強く要望し続けていくことが必要であるとの考えを示した.
 次に,来賓として,高村正彦自民党副総裁,古屋範子公明党副代表,武見敬三参議院議員・元厚生労働副大臣,櫻井充民主党前政策調査会長があいさつした.

中川・今村両副会長が大会の趣旨を説明

 引き続き,本大会の趣旨を日医の中川俊男・今村聡両副会長が説明した.
 中川副会長は,本大会の趣旨は“国民医療を守る”ことに尽きるとし,そのために必要なこととして,(1)社会保障財源の確保(2)国民の安全・安心を守るために必要な規制を死守(3)適正な医療人材の確保─の三点を挙げた.
 (1)では,政府に対し,消費税率の引き上げを決めた時,その全てを国民に還元すると明言した,国民との約束を守るよう強く要望.(2)では,医療における規制は,一括して「岩盤」とするのではなく,国民の安全・安心を守るために必要な規制と改革可能な規制を峻別すべきであり,医療周辺産業を経済成長の牽引(けんいん)役として期待することに異を唱えるものではないとしつつ,医療の本体については,断固として“非営利”を貫くべきと主張した.
 (3)では,東日本大震災の被災地を始め,地域の医療再生は道半ばであり,地域医療を犠牲にしてまで,国家戦略特区で医学部を新設すべきではなく,むしろ偏在解消に取り組むべきと指摘.今後,高齢社会が進む中で,住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する“地域包括ケアシステム”を,「かかりつけ医」を中心とした多職種が連携し,大きな力を結集して実現しようと呼び掛けた.
 今村副会長は,増税の延期は解決策を講じるための環境整備の時間ができたと捉えることもできると指摘.個々の診療報酬項目に含まれる仕入れ税額相当額分の「見える化」など,実態の正確な把握と確実な検証を行い,その結果を共有した上で,消費税一〇%時の抜本的解決への方法を選択していく必要があるとした他,平成二十九年度からの導入を目指すとされる消費税の軽減税率制度では医療についても検討していかなければならないとした.
 更に,診療報酬への上乗せによる公平な補填(ほてん)は不可能であり,多額の設備投資を必要とする医療機関等の負担は大きく,税率が一〇%になると経営そのものに重大な結果を引き起こしかねないと指摘.国民に最善の医療を提供できる体制の実現には医療機関等の健全な経営が大前提であり,消費税問題の解決は避けては通れない関門だとして,「消費税が一〇%になる平成二十九年四月に,医療界がかねてより要望してきた『医療機関等の消費税負担をめぐる問題の抜本的解決』に決着を付けるため,一丸となって行動していこう」と述べた.
 続いて,参加団体を代表して,国民医療推進協議会の副会長である大久保満男日本歯科医師会長,山本信夫日本薬剤師会長,坂本すが日本看護協会長から,それぞれ決意表明が行われた.
 その後は,宮島喜文日本臨床衛生検査技師会長が,本大会の決議案(別掲)を朗読.決議案は満場の拍手を持って採択された.
 最後に,松原謙二日医副会長の掛け声の下,参加者全員が起立して,「頑張ろうコール」を行い,会は終了となった.

大会の趣旨への理解を改めて求める

─横倉会長

国民医療を守るための総決起大会/「適切な医療・介護財源の確保」と「医療に係る消費税問題の抜本的な解決」を求める決議を採択(写真) 大会終了後,大久保日歯会長,山本日薬会長,坂本日看協会長と共に記者会見を行った横倉日医会長は,「本大会は,昨年十月二十九日に開催された『第十一回国民医療推進協議会総会』において,国民皆保険を基盤とした持続可能な社会保障制度の確立を求める国民の声を政府に届けるために実施することが承認された国民運動の一環として,十二月四日に開催予定であったが,第四十七回衆議院議員総選挙のため延期され,平成二十七年度予算編成の前後での開催となったものである」と説明.その上で,国民医療を守るため,「社会保障財源の確保」と「医療に係る消費税問題の抜本的解決」を求めるという本大会の趣旨への理解を改めて求めた.
 今後は,本大会で採択した決議の他,全国で開催されている同様の集会で採択された決議をもって,政府・与党,関係者等に上申していく予定となっている.

決 議

 豊かで安心な生活を営むことのできる地域社会の形成に向けて,国民皆保険を基盤とした持続可能な社会保障制度の確立は,すべての国民の願いである.
 そのため,消費税率10%引き上げ時に想定された増収分に代わるその他の充分な財源をもって,社会保障の充実を推進していく必要がある.
 よって,本大会参加者全員の総意として,次のとおり要望する.
一,現場の意見に即した国民に必要かつ充分な医療・介護を提供するための適切な財源の確保
一,国民と医療機関等に不合理かつ不透明な負担を生じさせている医療に係る消費税問題の抜本的な解決

以上,決議する.

平成27年1月15日

国民医療を守るための総決起大会

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