日医ニュース
日医ニュース目次 第1284号(平成27年3月5日)

横倉会長
「国家戦略特区による医学部新設」に反対する声明を塩崎厚労大臣に提出

横倉会長/「国家戦略特区による医学部新設」に反対する声明を塩崎厚労大臣に提出(写真) 横倉義武会長は二月十三日,久史麿日本医学会長,荒川哲男全国医学部長病院長会議会長,別所正美同会議顧問と共に厚生労働省を訪れ,塩崎恭久厚労大臣に,「国家戦略特区による医学部新設」に反対する声明を手渡した.
 今回の声明は,三団体の会長名によって取りまとめたものとなっており,その中では,(一)養成費用も含めて医師養成数の議論がまずは必要である,(二)これからの医学部新設は医師不足対策にはならず,むしろ医療の質を低下させる懸念がある,(三)国際的医療人材の育成は既存医学部・医科大学で既に着手されている,(四)地域医療の再生を妨げる恐れがある─の四点を提示.その上で,三団体は,日本の医育,医学,医療界を代表して,国家戦略特区による医学部新設に反対することを表明している.
 当日の会談で,横倉会長は,わが国の現状について,(1)医療施設の従事医師数は二〇二五年には三六・二人(約一・三倍),人口千人当たり医師数は三・〇人(約一・四倍)になると推計されること(2)新設医学部の定員数を従来の百人とすると,二〇一四年度までに既存医学部で増加した定員数千五百九人は,約十五医学部に相当すること(3)医師一人当たりの養成費用は医学部六年間で約一億円に達すること(日本私立医科大学協会調査)(4)分子を医師国家試験合格者数,分母を二十五歳人口として,同年齢のうち医師になる割合を算出すると二〇三〇年には百三十二人に一人が医師になること─等を説明.
 更に,医学部新設の問題点として,「教員確保のため,医療現場から多くの教員(医師)を引き揚げざるを得ず,地域医療の崩壊を加速する」「人口減少など社会の変化に対応した医師養成数の柔軟な見直しをしにくくなる」等を挙げ,理解を求めた.
 会談に同席した久日本医学会長,荒川全国医学部長病院長会議会長も,新たに医学部を新設する必要のないことを詳細に説明.国家戦略特区における医学部新設の理由として挙げられている「国際的な人材の育成」についても,既に既存の医学部で行われていることだとした.
 これに対して,塩崎厚労大臣は,「この問題は国家戦略特別区域諮問会議で議論の上,最終的には安倍晋三内閣総理大臣が決めることになるが,今日ご指摘いただいた懸念は理解できる」とした上で,「千葉県医師会を始め,地元の理解を得ることが必要であり,厚労省としては地域医療を守ることができるかを一番心配している.今後の推移を見守っていきたい」と応じた.
 会談後,厚労省内で記者会見に臨んだ横倉会長は,「国家戦略特別区域諮問会議などで急速に議論が進み始めたことから,今回声明をまとめ,塩崎厚労大臣に提出することにした」と,この時期に改めて反対の意を示した理由を説明.その上で,「人口が減少していく中で,日本の医師数はどうあるべきなのか,国には考えてもらいたい.特区なら何でもできると考えるようでは,将来の道を誤りかねない」と述べ,医学部新設推進の動きをけん制した.

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