日医ニュース
日医ニュース目次 第1289号(平成27年5月20日)

2015年世界医師会(WMA)オスロ理事会開催される
貿易協定と国民の健康に関するWMA理事会決議採択

2015年世界医師会(WMA)オスロ理事会開催される/貿易協定と国民の健康に関するWMA理事会決議採択(写真) 世界医師会(以下WMA)オスロ理事会が,ノルウェーのオスロにおいて四月十六日から十八日にかけて開催され,三十八医師会及び赤十字国際委員会等約百三十名が参加した.日医からは,横倉義武会長(WMA理事),松原謙二副会長(WMA理事),石井正三常任理事(WMA理事及び財務担当役員),畔柳達雄参与(医の倫理委員会,社会医学委員会アドバイザー)が出席した他,日本医師会Junior Doctors Networkから林伸宇医師が参加した.
 理事会では,役員改選で石井常任理事が財務担当役員に指名され受理された他,理事会議長にはアメリカ医師会のアーデス・ホヴェン前会長が女性として初めて選出された.
 審議では,イギリス医師会提出の「貿易協定と国民の健康に関するWMA声明案」が,緊急性が高いとして十月のモスクワ総会での審議を待たずに理事会決議として採択された.
 総会における主な議事内容は以下のとおりである.

理事会での審議結果「貿易協定と国民の健康に関するWMA理事会決議」

 本決議では,TPP(環太平洋連携協定),TTIP(環大西洋連携協定),TiSA(新サービス貿易協定)等,現在交渉中の協定が経済的利益の追求による健康に及ぼす影響を指摘し,勧告を行っている.
 これに関し,横倉会長は,「国民皆保険」を守るため,公的な医療給付範囲を将来にわたり維持すること,混合診療を全面解禁させないこと,営利企業を医療機関経営に参入させないことを日医は主張しているとコメントした.WMAの要請により,日医はTPPに関する見解と政府への要望を情報提供しており,当該文書にはその内容が包含されている.

2015年世界医師会(WMA)オスロ理事会開催される/貿易協定と国民の健康に関するWMA理事会決議採択(写真)(一)医の倫理関係

一.進行中議事の審議結果
(1)作業部会において草案を作成する文書
 〇人間中心の医療に関するWMA声明案
 〇ヘルスデータベース及びバイオバンクに関する倫理的考察に関するWMA宣言案
(2)コメントを要請するため各国医師会に回付される文書
 〇全世界の医学校のカリキュラムに医の倫理と人権を含めることに関するWMA決議改訂案
二.新規議事の審議結果
作業部会を設置して検討される文書
 〇WMAジュネーブ宣言

(二)社会医学関係

一.進行中議事の審議結果
(1)十月の総会に採択のために付託される文書
 〇ストリート・チルドレンへの医療支援提供に関するWMA声明案
 〇化学兵器に関するWMA声明案
 〇アルコールに関するWMA宣言案
 〇モバイルヘルスに関するWMA声明案
 〇核兵器に関するWMA声明案
(2)コメントを要請するため各国医師会に回付される文書
 〇健康の社会的決定因子に関するWMA声明改訂案
 〇備蓄天然痘ウイルスの廃棄に関するWMA声明案
 〇医療従事者に対する暴力と闘うワールドデーに関するWMA声明案
二.新規議事
(1)理事会承認された文書
 〇子供に対する全ての体罰の禁止と排除を支援する国際保健機関による声明を支持する提案
(2)コメントを要請するため各国医師会に回付される文書
 〇医師の安寧に関するWMA声明案
 〇医師のマスメディアへの出演に関するWMAガイドラインの提案
 〇性転換者に関するWMA声明案
 〇ビタミンD欠乏症に関するWMA声明案
(3)作業部会を構成して草案を作成する文書
 〇高齢化に関するWMA政策文書草案

(三)財務企画関係

一.今後の開催日程
 二〇一五年総会十月モスクワ(ロシア)
 二〇一六年理事会四月ブエノスアイレス(アルゼンチン),総会十月台北(台湾)
 二〇一七年理事会四月未定,総会十月シカゴ(米国)
 二〇一八年理事会四月未定,総会十月レイキャビク(アイスランド)
二.会費の新支払制度
 二〇一六年度から会費を五%引き上げる提案があり,十月のモスクワ総会で審議に付される.
三.JDN報告
 各国JDNによる活動紹介におけるベストプレゼンテーションにナイジェリアのJDNが選ばれ,日本医師会JDNの林医師は二位となった.

 なお,貿易協定と国民の健康に関するWMA理事会決議については,五月一日,横倉会長が石井常任理事と共に,塩崎恭久厚生労働大臣を訪ね,直接,決議の趣旨等について説明を行った(写真下)

塩崎厚労大臣に決議の内容を説明する横倉会長(右中央)

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