日医ニュース
日医ニュース目次 第1295号(平成27年8月20日)

第11回男女共同参画フォーラムinとくしま
「共同から協働へ〜多様性を生かしたワークシェアリング〜」をテーマに

第11回男女共同参画フォーラムinとくしま/「共同から協働へ〜多様性を生かしたワークシェアリング〜」をテーマに(写真) 第11回男女共同参画フォーラムが7月25日,前日に梅雨明けした徳島市内で開催された.
 林秀樹徳島県医師会男女共同参画委員会委員が開会を宣言.あいさつで横倉義武会長(今村聡副会長代読)は,県審議会等における女性の比率,管理職に占める女性の割合共に全国1位と女性の活躍が目覚ましい徳島県は,本フォーラム開催にふさわしいとした上で,「医療者として目指しているものは同じであり,男女を問わず時として仕事に制約が出てくるような事情を持つこともある.それらの事情を理解しつつ働き方の多様性を実現できる社会が,今求められている」と指摘.相互理解に基づく更なる「協働(“同じ目的に向かって”2人以上の人が“力を合わせて働く”こと)」があまねく広がり,本フォーラムが真の男女共同参画の実現に向けた一助になることに期待を示した.
 川島周同県医師会長は,県医師会の常任理事13名中4名が女性であることを紹介.本フォーラムでは,多様性の発揮による最大の効果を意図して,男女共同参画の国際比較と医学生の参画という水平・垂直の導入となったと説明した.
 報告では,まず,小笠原真澄日医男女共同参画委員会委員長が,同委員会が実施した取り組みや平成26・27年度の会長諮問に対する答申作成の途中経過等について概説した他,日医の男女共同参画に関する積極的な成果目標“女性一割運動”は数値目標の全てがクリアされたわけではないが,徐々に実現されつつあるとした.
 保坂シゲリ日医女性医師支援センター副センター長/日医女性医師支援委員会委員長は,女性医師バンクを始めとする同センター事業の運営状況を報告し,今年度は新たに「2020.30実現をめざす地区懇話会」を開催していることや,「女性医師の就労環境等に係る実情把握調査」を前回(2009年)調査と比較できる形で実施予定であること等を紹介した.
 基調講演「あなたが輝く働き方〜秘訣(ひけつ)はワーク・ライフバランス〜」では,2児の母で産業競争力会議民間議員でもある小室淑恵株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長が,ハーバード大学のデービットブルーム氏が10年前から提唱している「人口ボーナス期(子どもが減り,生産年齢の人口が多くなった状態)」「人口オーナス期(働く人よりも支えられる人が多くなる状況)」について説明.人口オーナス期までに育児・介護との両立ができる労働市場に変革できるかで,今後の日本の人口・競争力は大きく変わるとした.
 更に,大阪厚生年金病院など,働き方変革に取り組んだ事例を示しつつ,逆転の発想,インセンティブの付け方,時間当たり生産性の重要性を強調.「ライフ(家庭・私生活)が充実すれば,人脈・アイデア・スキルが得られて結果的にワーク(仕事)の質と効率が高まる」と述べ,「ワークとライフの相乗効果で,勝てる組織と充実した人生をつくっていきましょう」と結んだ.
 引き続き,シンポジウム「共同から協働へ〜多様性を生かしたワークシェアリング〜」(1)[日本の現状と課題]・(2)[国際比較,いま世界では](シンポジウムコメンテーター:笠井夫常任理事)が行われた.
 (1)では,徳島県出身,4児の父で,「第2回日本医師会 赤ひげ大賞」受賞者の白石吉彦隠岐広域連合立隠岐島前病院長,3児の父で,第2・第3子の育児休暇を取得した,早渕修徳島県鳴門病院内科医長,乳腺外科医として,出産後早期の職場復帰を果たした川中妙子徳島赤十字病院代謝内分泌外科副部長,2児の母である稲山真美徳島県立中央病院呼吸器内科医長の4名のシンポジストがそれぞれの経験談を語り,多田紗彩徳島大学医学部医学科5年生が加わってディスカッションを行った.
 (2)では,3児の母で女性医師としてアメリカで働いた経験を持つShadia Constantine MD FACP MPH医療法人渓仁会手稲渓仁会病院臨床研修部教育担当責任者,5児の母で,ドイツ・イギリス・アメリカの3カ国での留学と出産経験を持つ吉田穂波国立保健医療科学院生涯健康研究部母子保健担当主任研究官,1児の母でアメリカ留学の経験があり,“M字カーブの窪みの年代”という高須千絵徳島大学病院消化器・移植外科助教,海外の若手医師と共に活動し,各国の女性医師同士キャリアの悩みを相談し合った,三島千明ジュニアドクターズネットワーク(JMA─JDN)副代表の4名がそれぞれの経験を通して見た世界の現状を語った後,平川貴規徳島大学医学部医学科6年生が「研修医及び医学生対象アンケート結果」を提示しつつ,会場の参加者と共にディスカッションを行った.
 その後,フォーラム宣言採択に移り,谷憲治・坂東智子両同県医師会男女共同参画委員会副委員長が,「第11回男女共同参画フォーラム宣言(案)」を読み上げ,満場一致で採択された(下記参照)
 最後に,次期担当医師会の太田照男栃木県医師会長のあいさつに続いて,渡辺滋夫徳島県医師会男女共同参画委員会委員が閉会を宣言し,フォーラムは終了となった.参加者は329名.
 なお,次回は,平成28年7月30日に宇都宮市内で開催される予定となっている.

第11回男女共同参画フォーラム 宣言

 今日,医療の高度化,ニーズの多様化,超高齢社会など医療環境は大きく変化してきており,医師の負担は増している.これに対して,すべての医師がその使命を最大限に果たせるように,勤務環境整備や男女共同参画への様々な支援や意識改革の提言がなされてきた.
 今後重要なことは,男女問わず,すべての医師がお互いの特性や能力を尊重しつつその多様性を生かしたワークシェアリングを実践することによって,協働性を持って支えながら働いていくことである.それは安全で安心な医療の提供につながる.
 真の男女共同参画を推進していくために,以下のことを宣言する.

一,自らキャリア形成を図りながら医師としての役割を果たしていく意志をもつ.
一,個人の特性を活かすことのできる勤務環境の整備と意識改革を推進する.
一,共同から協働へ働き方の変革を促進することにより,次世代のすべての人達が日本のみならず世界的視点に立って社会に貢献できる土壌つくりを行う.

平成27年7月25日
日本医師会 第11回男女共同参画フォーラム

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