日医ニュース
日医ニュース目次 第1296号(平成27年9月5日)

南海トラフ大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)2015を実施

南海トラフ大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)2015を実施(写真) 「南海トラフ大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)2015」が7月29日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)並びに国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の協力の下、日医会館で開催された。
 日医では、JAXAとの間で平成25年1月に締結した「超高速インターネット衛星『きずな』を用いた災害医療支援活動における利用実証実験に関する協定」に基づき、NICTと共に、「南海トラフ大震災を想定した衛星利用実証実験(防災訓練)」を毎年実施している。
 今回の訓練には、「きずな」のアンテナを設置した、静岡、三重、高知(高知県庁設置)、宮崎の各県医師会、更に、NTTドコモ「ワイドスターII」端末を設置した和歌山県医師会も、テレビ会議システムを使って参加した。
 当日は、石井正三常任理事による防災訓練開始宣言の後、横倉義武会長があいさつを行い、「南海トラフを震源とする巨大地震では、複合災害へと発展することも想定されており、日本の医療界を結集した災害対応が求められている」と指摘。更に、本年6月9日付で被災者健康支援連絡協議会の代表として、政府の中央防災会議の委員に任命されたことを報告し、「政府の災害対策の中で医療の重要性が認識された。改めて医療界を代表する立場として、重大な責務を感じている」と述べた。その上で、「日医の使命は、都道府県医師会、日医会員、関係者の協力の下、大規模災害発生直後から活動を開始し、復興するまでさまざまな形で支援をすることにある。今回の訓練を通して、多くのことを学びたい」とした。
 次に、内藤一郎JAXA衛星利用運用センター長が「衛星『きずな』と『だいち2号』と災害救援航空機情報共有ネットワーク(D─NET)」について、酒井航株式会社ドコモCS第一法人営業担当主査が「衛星電話ワイドスターII、タッチレス・映像伝送システム」について、永田高志日医救急災害医療対策委員会委員(日医総研客員研究員)が「インシデントコマンドシステム、クラウド型医療情報システム」について、松本純一常任理事が「大規模災害等における警察庁と日本医師会との協力に関する協定」(本年7月3日に締結)について、それぞれ概要を説明した。

複合災害を想定した防災訓練

 続いて、石井常任理事が、被害想定及び災害発生時から7日目までの日医の対応等について、シナリオに沿って説明しながら訓練を開始した。
 訓練では、駿河湾沖を震源にした巨大地震が発生した直後、日医に災害対策本部を設置し、JMAT派遣等の対策を講じようとする中で、四国沖を震源とする地震が連動して発生したことを想定。被災地の医師会と連絡が取れない状況になる中、JAXAと協力し、「だいち2号」による被災地の画像提供を受けながら支援方針の検討を進め、「きずな」や「ワイドスターII」を用いて、各県医師会と連絡を取り、対応を協議するものとなった。また、今回は複合的な災害も想定し、地震による浜岡原発への影響や大型台風の接近、富士山の火山活動なども考慮して行われた。
 「きずな」のアンテナを設置した4県医師会からは、篠原彰静岡県医師会長、青木重孝三重県医師会長、岡林弘毅高知県医師会長、河野雅行宮崎県医師会長が、各地の被害や対策等の状況について概説。更に、「ワイドスターII」を用いて、寺下浩彰和歌山県医師会長からも報告が寄せられた。
 また、静岡県榛原医師会からは、NICT車載アンテナを用いて、高木平榛原医師会長や石原哲前日医救急災害医療対策委員会委員らが現地の状況を報告。日医と各都道府県医師会の対応状況を全国で把握できるよう、専用クラウドに入力できるクロノロジー(時系列活動記録)の実演も行われた。
 最後にあいさつした横倉会長は、「今回の訓練は、東日本大震災を想起させるような現実味を帯びたものとなっていて、当時、実際に日医で活動した経験を思い出しながら、各関係者との連携を確認することができた。今後もこのような訓練を引き続き実施していきたい」と訓練継続の意義を強調。松原謙二副会長は、今回の防災訓練に協力頂いた関係者に感謝の意を示すとともに、「国民のためにはICT(情報通信技術)など全ての手段を用いて、全ての関係組織が力を合わせて向き合わなければならない」と協力体制を維持していくことの重要性を指摘し、訓練は終了となった。

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