Vol.3公開:令和6年9月
月経困難症を治療する低用量ピル
順天堂大学大学院医学研究科産婦人科学 教授
河村和弘
低用量ピルとは
低用量ピルとは、もともとは避妊のために開発された薬でしたが、生理痛が軽くなるなどの効果が明らかになり、現在では月経困難症を治療する薬として使われているものもあります。
作用・効果
低用量ピルは、ホルモンをコントロールする脳下垂体に作用し、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌を減少させ、卵胞を育たなくさせることで排卵を抑制します。それと同時に、卵胞から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)も抑制されるため、月経時に剥がれ落ちる子宮内膜が育たず薄いままになります。その結果、避妊の効果はもちろんありますが、月経の量が減り、月経でつくられる炎症物質も減りますので生理痛が軽くなります。
また、月経前にさまざまな症状によって体調が悪くなる月経前症候群(月経前の黄体ホルモン「プロゲステロン」の変化で起こると考えられています)に対しても、低用量ピルは排卵を抑制し、排卵後につくられる黄体からの黄体ホルモンの分泌も抑えることができるため、その症状の改善に有効と言われています。
種類
月経困難症に対して保険診療で処方が可能な低用量ピルには、表1のような薬剤があり、いろいろな製品名で扱われています。毎月月経を起こさせながら使用する薬と、長期間(最長4カ月まで)月経を起こさせないで使用できる薬があります。
服薬の注意点
低用量ピルを使うことで、静脈にできた血の塊が血管を塞ぐ静脈血栓塞栓症の発症率が、わずかではありますが増加することが知られています。もし、激しい腹痛、激しい胸痛、呼吸困難、激しい頭痛、視野の障害、言語障害、意識障害、ふくらはぎの痛み、などの症状が現れた場合は、すぐに飲むのをやめて医療機関を受診してください。静脈血栓塞栓症は、高血圧や片頭痛をお持ちの方、喫煙者では発症のリスクが高く、低用量ピルの使用開始後4カ月以内に起こることが多いので、注意が必要です。
この記事をシェアする