Vol.5公開:令和7年1月

コンタクトレンズで目にトラブルを
起こさないために

東邦大学医学部眼科学講座 教授
堀 裕一

はじめに

現在、全国で1,400万人のコンタクトレンズ装用者がいると言われています。眼鏡とコンタクトレンズにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、コンタクトレンズには、①視力に左右差があってもそれぞれの度数を細かく合わせることができる、②スポーツをする時に邪魔にならない、③レンズがくもらない-などのメリットがあります。
ほとんどの方が問題なく装用していますが、中には目がすぐ赤くなったり(充血)、ゴロゴロしたり(異物感)、目が乾いたり(乾燥感)して、コンタクトレンズ装用を続けることができない方がいます。その中には、もともと目にドライアイがあり、コンタクトレンズ装用に向いていない方もいますし、コンタクトレンズの間違った使用法でトラブルを起こしてしまう人もいます。
コンタクトレンズと目の合併症について正しい知識をつけておくことで、コンタクトレンズ装用にかかわるトラブルをなくすように心がけましょう。

コンタクトレンズのリスクを知っておこう!

屈折異常(近視、遠視、乱視)を矯正する手段として、眼鏡やコンタクトレンズがあります。コンタクトレンズは、レンズ面を角膜に直接接着させて光の屈折を変化させて視力を改善(屈折矯正)します。しかしながら、コンタクトレンズが直接角膜に接着することで、角膜に傷をつける可能性があり、それが大きなリスクとなります。
角膜は目の表面のレンズの役割をしている厚さ約0.5mmの透明な膜で、一番外側には角膜上皮細胞が存在します(図1)。この角膜上皮細胞は、目の表面のなみだ(涙液)で乾燥と刺激から守られています。コンタクトレンズ装用時にはレンズ自身が角膜上皮細胞を直接傷つける可能性がありますし、さらに傷ついた角膜から病原体が目の中に入り感染症を起こすリスクもあります。コンタクトレンズ装用にはこのようなリスクがあることを知っておく必要があります。

コンタクトレンズとドライアイ

目の表面にある角膜は、非常に薄いなみだの層(涙液層)でその表面を覆われており、乾燥や刺激から守られています。なみだが目の表面で少なくなって、乾燥感などの症状が出ることを「ドライアイ」と言います。
コンタクトレンズを装用すると、角膜上のコンタクトレンズが涙液層に影響を及ぼします(図2)。具体的にはなみだの量が減ったり、なみだが蒸発して乾きやすくなったりします。もともとドライアイのない方でも、コンタクトレンズをつけるとドライアイ症状が出る方もいます。そのような方は、しっかりとドライアイ対策をしてコンタクトレンズを装用する必要があります。具体的な対策には、乾きにくい材質のコンタクトレンズやワンデータイプのコンタクトレンズに変更したり、ドライアイ用の目薬を併用したりすることが挙げられます。また、コンタクトレンズ装用はできるだけ短時間にするほうが良いでしょう。

コンタクトレンズによる角膜感染症

コンタクトレンズ装用は、微生物による角膜感染症のリスクが常にあります。大きなリスクとしては、①コンタクトレンズをつけるときに、汚染された手指を介して微生物が目に入る場合、②保存ケース内が微生物に汚染されて、コンタクトレンズに付着した微生物が目に入る場合-の二つが挙げられます。
角膜感染症では、目の違和感、痛み、充血、目やに、なみだなどの症状の他に、炎症によって角膜が濁ってしまい、視力が低下することもあります。重症の角膜感染症では、治療を行った後でも角膜が濁ったままで視力低下の後遺症が残ってしまうこともあります。
角膜感染症は、①指定期間を超えて装用する、②レンズケアを怠っている、③手指をきれいに洗っていない-などの誤ったコンタクトレンズの扱い方が原因になることが多くあります。日ごろから正しいレンズケアやレンズ装用を心がけてください。

コンタクトレンズの正しい扱い方

最後に、正しいコンタクトレンズの扱い方について説明します。

1コンタクトレンズを扱う前に、手指をきちんと洗いましょう。

汚れた手指でコンタクトレンズを扱うと、油やたんぱくがコンタクトレンズに付着したり、微生物に汚染したりする可能性があります。装用前に石鹸できちんと洗ってください。

2お化粧の前にコンタクトレンズをつけましょう。

前に述べたようにお化粧する際に手指が汚れます。先にコンタクトレンズをつけてからお化粧をしてください。

3レンズはこすり洗いをしましょう。

2週間や1カ月で交換するタイプのコンタクトレンズの場合、保存液につけておくだけでは、付着した汚れを落としきることはできません。手のひらにコンタクトレンズをのせて、指の腹で同じ方向に前後に約10秒間こすり洗いをしてください。

4レンズケースはこまめに替えましょう。

角膜感染症では、レンズケースの汚染が大きな問題になっています。ソフトコンタクトレンズの場合、レンズケースは3カ月を目途に新しいものと交換してください。

5装用時間を守りましょう。

極端に長時間のコンタクトレンズ装用や、レンズをつけたまま寝てしまうことは、大きなリスクとなります。正しい装用時間で装用してください。

6処方と定期検査は眼科専門医で。

コンタクトレンズによる目の合併症を起こさないようにするためには、眼科での診察が重要です。症状が出た時だけ受診するのではなく、日頃から定期的に眼科で目を診てもらうことが重要です。

この記事をシェアする

OFFICIAL SNS

SHARE