白クマ
日医白クマ通信 No.1008
2008年9月19日(金)


定例記者会見「DPCの問題点を改めて指摘」
―中川常任理事

 中川俊男常任理事は、9月17日の定例記者会見で、 (1)医療内容の変質と患者の負担、(2)医療経営上のモラルハザード、(3)医療の達成度との関係、(4)DPC病院の経営分析に見る地域医療格差の拡大、(5)「がん」との関係―という5つの視点から、DPCの問題点を改めて指摘した。

 (1)に関しては、DPC病院では、退院時の治癒率の割合が低下し、再入院の割合が増加していることを挙げ、仮に急性期では治癒率が高いことが求められていないとしても、DPC導入後に、治癒率が一貫して低下傾向にあることは問題であると批判。また、在院日数の短縮は、患者にとって入院中の精神的・身体的負担を増大させ、さらには退院後の負担をもたらすことも少なくないことから、患者の退院後も含めた実態調査を早期に実施すべきとの考えを示した。

 (2)については、DPCの制度自体の特性から、経営上のモラルハザードを誘発しかねないとし、厚生労働省に対して、DPC病院における指導監査で明らかとなった、適切でない請求事例の具体的内容の提示を改めて求めた。

 (3)に関しては、DPC評価分科会がまとめた「医療の達成度、患者満足度に係る調査」報告書のなかで、「DPCに対する理解が医療の達成度に好影響を与えていることが明らかとなった」としていることに言及。DPC分科会では、実態調査の結果を肯定的にとらえているようだが、経営者に近い年齢層である60歳代以上を除くすべての年齢で、医療の質が「低下した」と回答した比率が「向上した」と回答した比率を上回っており、その比率は特に40歳代以下で顕著でDPCを導入した時期が早いほど高いこと、中堅層の40歳代の医師で「無理な退院や中途半端な退院が増加した」との回答が1割近くに達しており、また早くからDPCに取り組んでいる病院ほど、その比率が高いこと―等を見ると、医療現場においては、DPCを長く続けている病院医師の疲弊やDPCを疑問視する声もあるのではないかと述べた。

 (4)については、国公立病院に関して、DPC病院とそれ以外の病院との収入等を日医で比較・分析した結果、限られたデータによる分析ではあるものの、当初からDPCに手を挙げた病院は、もともと在院日数が短いうえ、収入が多く、患者単価も高く、優位な位置にあったことが明らかになるとともに、調整係数による安定的な収入を財源として、医師、看護師も増大させていることが推察されること等を改めて説明。特に、入院単価の伸びに関しては、平成18年対象病院が前年の平成17年度にかなりの単価の伸びを示していることに着目し、「DPCは調整係数によって、前年度の診療報酬が保証されることから、DPC対象病院になる前年に過度の診療を行い、点数を引き上げているとの指摘もある」とした。

 (5)では、351のがん拠点病院(平成20年4月時点)のうちの9割がDPC病院であること、特に悪性新生物(がん)に関しては、DPCの導入後、平均在院日数の短縮化が進んでいる一方で、外来患者数が増加している傾向にあることに留意すべきとした。  

 以上を踏まえたうえで、同常任理事は、DPCが今後目指すべき方向性として、(1)厚生労働省に指導監査やDPC対象患者の外来診療を含めた診療内容等の詳細データの公開を求め、医療機関経営におけるDPCの実態を明らかにする、(2)患者の視点から実態調査を早急に実施し、問題がある場合には、DPCの拡大を凍結する、(3)医療費の抑制が行き過ぎ、フリーアクセスの制限につながらないよう、DPCからの撤退は自由にする―との日医の見解を改めて示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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