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定例記者会見 『「高齢者のための医療制度」の提案』を刊行 ―中川俊男常任理事 |
中川俊男常任理事は、10月22日の定例記者会見で、『「高齢者のための医療制度」の提案』を刊行したことを公表した。
2008年4月から始まった後期高齢者医療制度は、これまでにさまざまな問題点が指摘されているが、現在、制度の見直しに関する議論が、厚生労働省や政府、与野党からも起こっている。日医では、これまでも一貫して、保障の理念の下で運営する「高齢者のための医療制度」を提案してきた。今回作成した冊子は、日医が提案した「高齢者のための医療制度」を改めてまとめたものである。
同常任理事は、まず、現行の後期高齢者医療制度の問題点を指摘するとともに、1990年代後半から始まった高齢者医療制度改革の経緯を改めて説明。そのうえで、「高齢者のための医療制度」の基本的な考え方として、(1)保障の理念の下、75歳以上を手厚く支える、(2)若者から高齢者へ、急性期から慢性期へ切れ目のない医療を提供する、(3)医療費の9割は公費(国)が負担する、(4)家計負担(保険料と一部負担)は1割とし、患者一部負担は所得によらず一定とする、(5)運営主体は都道府県とする―の5項目について解説した。
(1)では、75歳以上のすべてを対象とした独立型の医療保険制度とした理由として、入院受療率は75歳以上から急激に高まり、外来受療率は75〜79歳がピークとなること、75歳以上では、疾病構造が変化すること、脳血管疾患の場合、75歳以上では平均在院日数が100日を超えることなどを指摘。高齢者が保険財政に制約されることなく医療を受けられるよう、特にリスクの高い75歳以上に対して手厚い制度が必要であるとした。
(3)では、現行制度では、一般の医療保険に公費4.8兆円を投入し、4.7兆円を改めて後期高齢者支援金として後期高齢者に投入しているが、日医案は、始めから4.7兆円を高齢者に充当することで、公費9割を実現しようとするものであると説明。ただし、1兆円弱の不足分については、国の歳出改革や新たな財源で対応可能であるとの考えを示した。
また、同常任理事は、一般医療保険における財源の確保のあり方についても言及。(1)保険料の上限の見直し、(2)被用者保険の保険料率の公平化、(3)保険者間の財政調整―を行うことで、公費9割負担が実現するとし、日医案への理解と協力を求めた。
さらに、同常任理事は、「今後も高齢者人口の増加が見込まれるなかで、公費を重点的に投入する高齢者の医療費については、新たな財源を確保する必要がある」と強調。財源構成や新たな財源確保等については、本年度中に発行を予定している『グランドデザイン2008』で詳細を解説すると述べた。
なお、冊子は、都道府県・郡市区医師会に送付したほか、国会議員や関係省庁にも配布された。
◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03−3946−2121(代)
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