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第3回生命倫理懇談会 上原教授が「医療安全とプロフェッションの役割」で講演 |
1.リスクマネジメントから患者安全へ−医療安全の国際動向− 過去30年の間に急速に進行した医療技術革新は、医療への期待を高める一方で、効果が不確実で危険を伴う治療や処置の飛躍的増大、医療プロセスの多様化・複雑化等をもたらした。しかし、医療技術革新に対応する組織的アプローチ、事故を起こさないシステムと体制が作られてこなかったことが今後の課題となっている。 欧米での医療安全に対する取り組みは、特に1999年の米国医学研究所の報告書(“To err is human”)を契機として、以後の10年間に、訴訟のリスクから病院を守るRisk Managementから、患者を事故から守る予防的安全管理としてのPatient Safetyへと転換してきた。 2.わが国の医療安全への取り組み わが国においても、1999年の横浜市大事件以降、医療安全に取り組んできたが、「リスクマネジメントから出発したこと」「世界に例がない警察による捜査と刑事告発」「医療者個々人の献身的努力に依存する医療環境等の要因」などにより、医療界による、あるいは政策による、事故防止の取り組みはまだ不徹底とも言える。その中で、2008年10月、医療の質・安全学会、日医、看護協会、病院団体協議会等がリーダーシップをとって、「医療安全全国共同行動」“いのちをまもるパートナーズ”がスタートした。この行動が全国規模に拡がり、患者と医療者がともに安心して治療に専念できる医療の仕組みと体制をつくる礎になることが期待される。 3.上原教授からの2つの提案 日本の医療安全におけるプロフェッションの役割とシステムについて、特に以下の2点を提案したい。それは、(1)プロフェッションの質保証を担う組織・体制の確立、(2)事故被害救済制度(医療傷害保険・補償制度)の創設―である。(1)については、法律的根拠を有すること、プロフェッショナル・オートノミーが確保されていることが重要で、具体的には、「医師の自律的懲戒制度(機構)の確立」「医師憲章の制定と行動規範の策定」「質保証と改善(標準化、教育・再教育、情報支援等)のイニシアティブ」が必要である。(2)に関しては、医師を無謬性神話の呪縛から解放するためにも、リスクを患者と共有する仕組みとして、その創設が望まれる。 講演終了後、出席者との間で活発な質疑応答が行われ、最後に、今後答申作成に向けて懇談会のもとに作業部会(高久座長以下5名の委員で構成)を設置することが決定した。 ◆問い合わせ先:日本医師会企画課 TEL:03-3946-2121(代) |
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