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定例記者会見 「財政制度等審議会建議に対する日医の見解」 ―中川常任理事 |
同常任理事は、「財政審建議は、社会保障費の自然増に対する年2,200億円(国の一般会計予算ベース)の削減について言及していない。しかし、“『基本方針2006』等でも示されている歳出改革の基本的方向性は維持する必要がある”としている。さらには、コスト縮減、給付の重点化等の効率化を求めており、財政中立の姿勢を崩していない。長期に亘る医療費抑制の結果、病院・病棟の閉鎖、外来の休止が相次ぎ、医療難民、介護難民の不安が高まっている。地域医療を再生するには、勤務医の過重労働を緩和し、病院、診療所が一体となって取り組まなければならない。医療機関が健全に存続することが大前提であり、十分な財源の下で、地域医療の全体的な底上げが必要である。あらためて、社会保障費削減の撤回を強く求める」とし、日医の見解を述べた。 まず、財源について、「建議では、日本医師会の財源についての提案が引用されたが、医療費抑制、国民負担の観点からのみ引用されており、遺憾である」と苦言を呈し、以下の説明を行った。 日本医師会は、かねてより、「高齢者のための医療制度」を提案している。そのなかで、現行の財源で一般医療保険に投入されている公費を、高齢者医療保険に集中投入することで、高齢者医療は『保障』の理念の下、主として公費(国)で手厚く支え運営する一方、一般保険制度は、公費の投入がなくなるが、同時に後期高齢者支援金の負担をなくすことで、収支がほぼ均衡し、完全な『保険原理』で運営できることを提案している。 したがって、建議で引用された、日医が提案する「国民皆保険を守るための財源」は、あくまでも、「高齢者は、保障、一般は保険で」とする、日医の考える制度を実現するための財源である。 つぎに、医師数増加について、財政審建議は、2008年度および2009年度に大学医学部定員が1割を超えて増員されたことについて、『当審議会が行った医師会からのヒアリングにおいて示された、医師数は中長期的に1.1倍〜1.2倍にすることが妥当、との考え方にも概ね沿う』としたことに対し、「日医は医師数増加の前提として、財源の確保、教育制度の見直し、医師養成数の継続的な見直しを条件としている。単純に1.1倍〜1.2倍で妥当としているわけではない」と抗議した。 また、病院と診療所の診療報酬配分の見直しについては、病院勤務医と開業医を比較することの問題点を改めて整理し示した。 同常任理事は、「建議では、勤務医と開業医の対立構造に持ち込んでいるが、それは本質的な問題のすり替えである。勤務医と開業医の年収を比較するのは、若手社員と企業の社長、あるいはサラリーマンと個人事業主の年収を比較するようなものであり、恣意的であると言わざるを得ない」と批判した。 このほか、(1)医師の診療科や開業地域の規制、(2)病院機能の効率化・高度化、(3)医師の能力に応じた診療報酬、(4)医療従事者間の役割分担の見直し、(5)私的医療費の増加、(6)混合診療の全面解禁に対する問題点、(7)保険免責制導入の問題点―等の各項目ついて資料に沿って日医の見解を解説した。 最後に同常任理事は、「建議の中で、『日本医師会』の文字が4カ所ほど記載されているが、日医の見解の全体を捉えず、一部だけを用いて日医の発言としている部分がある。今後も用いられるようであれば、しっかりと反論し、厳重に対応しなくてはならないと考えている」と指摘した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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