白クマ
日医白クマ通信 No.1158
2009年7月21日(火)


第7回医療政策会議
「日本の医療 光と影 ―大学病院のなくなる日―」について講演

第7回医療政策会議


 第7回医療政策会議(議長・田中滋慶大大学院教授)が7月15日、日医会館で開催され、小川彰岩手医大学長・全国医学部長病院長会議会長が、「日本の医療 光と影 ―大学病院のなくなる日―」と題して、講演を行った。

 小川氏は、まず、WHOの「World Health Report」や、OECDの「ヘルスデータ2007」の脳卒中入院30日以内の院内致命率が、日本では、脳梗塞:3.3%(OECD平均:10.1%)、脳出血:10.9%(同26.9%)とのデータ等を示し、日本の医療レベルは世界で最も良好であるとした。一方、医師数(人口1,000人対)については、OECD30カ国中27位と平均の2/3に過ぎないと指摘。また、北海道に次いで広い面積を有する岩手県では、9つの2次医療圏に3ヵ所の高度救命救急センターしかないが、病診・病病連携に支えられ、逆に平均以上の医療を受けられていると言えると説明した。

 次に、日本の医師不足の歴史について、昭和57年の医師数抑制についての閣議決定後、「医療費亡国論」等もあり、財政抑制・医療費抑制のための医師養成削減政策がとられ、平成16年に始まった新医師臨床研修制度が止めを刺したと指摘。さらに、理想の地域の医師像や卒前・卒後の医学教育の一貫性の欠如にも言及した。

 臨床研修制度の負の影響としては、(1)地方医療の崩壊、(2)診療科間偏在―を挙げ、医学研究の国際競争力や国民福祉の低下が危惧されるとした。そのうえで、安い医療費で世界一の医療を提供している日本の医療は、現場医師の善意と献身的自己犠牲の上に成り立っており、諸悪の根源は低医療費政策であるとして、日本はなぜ、イギリスと同じ轍を踏み、反省・改善しないのかと疑問を呈した。

 また、「臨床研修制度の迅速な見直し」「医学生涯教育の観点に立った医学教育改革案」など、全国医学部長病院長会議からの種々の提言・要望といったメッセージを紹介し、医学生涯教育システムを早急に構築する必要があると主張。しかし、根幹には日本の医療制度の問題があり、輸入に頼っている医薬品・医療機器問題や、雇用創出の観点からも、「医療費亡国論」から「医療立国論」へ転換すべきだとした。そして、「基本方針2006」の歳出削減を堅持することを示した「経済財政改革の基本方針2009」を批判、全国医学部長病院長会議として、(1)低医療費・低教育費政策を見直し、先進国並みのレベルに引き上げること(2)医学医療政策に規制的手法を導入しないこと―を要望したと説明した。最後に、今後の医療医育制度改革の視点として、低医療費・低教育費政策の見直しと医療立国への政策変更の重要性を強調、「医療は平時の安全保障である」との考えを示し、日医に対しても国を動かす活動を要請した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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