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定例記者会見 「民主党のマニフェストに対する日医の考え示す」 ―中川常任理事 |
同常任理事は、はじめに、「本日の会見は、特定の政党を支持するとかしないとかの問題ではなく、日医の見解を明確にするために行うものである」と会見の趣旨を説明したうえで、マニフェストに示された主な項目に対する考えを示した。 消費税を財源とする「最低保証年金」を創設するとしていることについては、消費税は、現在も一般会計の予算総則で、基礎年金、後期高齢者医療、介護の国庫負担に充てることが定められているが、現在でも9.1兆円不足しているとし、将来月額7万円に引き上げ、全額を国庫が負担することになれば、財源不足がさらに拡大すると指摘。さらに、民主党案では高齢者医療、介護の国庫負担分は消費税以外の税収等に依存するしかなく、税収等の増減によってさらなる抑制が懸念されるとして、医療、介護の財源をいかに確保するのか、明らかにすべきと主張した(会見資料P.2)。 後期高齢者医療制度を廃止するとしていることに関しては、単に現行制度を廃止するだけでは拠出金の問題が再燃すると指摘。また、「廃止に伴う国民健康保険の財政負担増(8,500億円)は国が支援する」としていることについても、財源が明確でないとした。一方、保険者間の不公平の是正については、以前から日医が主張してきたことであり評価出来るとし、日医ではさらに踏み込んで、保険料率の公平化による財政調整を行うことを提案しているとした(会見資料P.4)。 医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを提供するための方策として、民主党は、(1)社会保障費2,200億円の削減方針を撤回し、医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する、(2)OECD平均の人口1,000人当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする、(3)国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する、(4)救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う、(5)無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する―等を示している。 同常任理事は、(1)については、2,200億円の削減の撤回はかねてから日医が主張してきたとおりであるとして賛意を示す一方で、診療報酬(入院)を増額するとあるが、崩壊したのは病院の医療だけではないと反論。国民、地域住民に安心、安全の医療を提供するためにも、地域医療の全体的な底上げが急務であるとした(会見資料P.5)。(2)については、日本の医療提供体制の特性や社会的背景等を検討しているようには見受けられないとして、『グランドデザイン2009』に示した将来の医師数に対する日医の考えを改めて説明(会見資料P.6)。(3)については、実質的に地域医療を支えている民間病院、診療所には触れられていないとし、租税特別措置の見直しによって国公立医療機関と民間医療機関との差が拡大するおそれがあると指摘。(4)については、地域医療全体が再生しなければ、救急、産科医療等も立ち行かなくなるとして、医療現場の実態を認識したうえでの日本の医療の再生を求めた(会見資料P.7)。さらに、(5)に関しては、その方向性は日医が主張してきたことであり評価出来る。今後、患者が安心して医療を受けられるよう、より明確な財源を示して欲しいとした(会見資料P.8)。 つづいて、「民主党政策集INDEX2009」の内容から、包括払い制度導入を推進するとしていることに関しては、包括払いでは、必要な医療が実施されなくなるおそれがあることや標準化は行き過ぎると管理医療につながるばかりでなく、医師の裁量が失われ、新たな医療、高度な医療へのインセンティブがなくなるとして、医療の平均水準が下がることへの懸念を示した(会見資料P.9)。 中医協の構成・運営等の改革を行うとしていることについては、報道で民主党幹部が、「利害関係者が自分たちの取り分を決める政府の制度は他にない」と指摘したとされているが、中医協は厚労省のなかでも最も透明性の高い審議会であり、診療側委員も開業医に偏っているわけではなく、現場の実情を理解している委員だからこそ核心をついた議論が出来ていると説明。医療現場の実情をつぶさに把握せずに、国会で診療報酬を決定することは現実的ではないとの考えを示した(会見資料P.10)。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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