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第8回医療政策会議 「社会経済構造の変化と医療政策のあり方」について講演 |
島崎氏は、(1)問題の所在と視点、(2)人口問題と医療政策、(3)医療政策の基本的課題と評価基準、(4)医療政策の短期的な課題、(5)医療政策の中長期的課題―同時に「今」取り組むべき課題―という項目に沿って説明した。その概要は、以下のとおり。 医療はさまざまな要因が絡み合う「構造問題」である。対症療法的な対応も必要であるが、社会構造の変化は大きい。政策を考えるに当たっては、将来から逆算して課題を考える視点も重要である。特に、人口(世帯を含む)の構造変化は、直接・間接に医療制度・政策に甚大なインパクトを及ぼす。 日本の医療のパフォーマンスは、1)質、2)アクセスの公平性、3)コスト―という3つの医療政策の目標(評価基準)に照らし良好だと考えられるが、政策課題を明らかにするためには、丁寧に評価を行う必要がある。 低医療費政策からの転換は必要である。ただし、効率化の努力は避けて通ることは出来ない。少子高齢化・人口減少等による潜在成長率の低下など、制約条件を軽視すべきではない。だからこそ「強い国民的合意」が必要であるが、国民は3つの目標の同時達成の困難性や医療の特質等を十分理解しているわけではない。「負担の覚悟」が出来ていなければ、政策の揺り戻しが起こり、医療制度は不安定になる。 医療制度や政策の「何を守り、何を改めるのか」ということを十分見極める必要がある。日本の医療制度の三大特徴(1.被用者保険・地域保険の二本建ての国民皆保険、2.病院も「民」中心主義の採用、3.フリーアクセスの尊重)の「意味」「功罪」も基本に立ち返り吟味する必要がある。また、医療は複雑系であり、政策は適切な方法の選択も非常に重要である。ファイナンスについては、財源論を封印したまま制度論を議論することは出来ない。また、社会保険方式の意義の評価等も重要である。デリバリーについては、医師の養成数を増やすことは必要だが、どういう医師を育成するのか、地域・診療科の偏在是正をどう調整するのか、あいまいにすべきではない。 機能分化は必要であるが、“切れ目のない連携”のためには、インターフェイス・ロス等の最小化が必要である。プライマリケアの医療政策上の位置づけの明確化は重要であり、総合医(家庭医)の議論も本来そういう文脈で議論されるべきである。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代) |
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