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定例記者会見 「中医協・医療経済実態調査の分析」を公表 ―中川常任理事 |
中川俊男常任理事は、11月5日の定例記者会見で、10月30日開催の中医協総会で公表された「第17回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告―平成 21年6月実施―」に対する日医の見解を、「中医協・医療経済実態調査の分析」という資料を示しつつ説明した。 特に医療経済実態調査の発表後、「開業医の年収は勤務医の1.7倍」との報道があいもかわらずなされていることを問題視し、今回比較対照にされた一般診療所の院長には、経営責任があることを認識すべきであると強調した。 「同分析」は、(1)医療経済実態調査(以下、実調)の問題点、(2)カテゴリ別の損益状況、(3)損益分岐点比率、(4)医師の給与と所得についての考え方、(5)まとめ―で構成されている。 (1)では、実調は、これまで6月1カ月分だけを調査してきたため、費用によっては直近事業年度の金額の12分の1の額を記入するものもあり、損益状況を正確に示すものとは言えず、また定点調査でもないと指摘。そこで、日医が昨年10月22日の中医協で、改定前後の決算データによって医療経済状態を把握することを提案し、その結果、直近1年分の決算データが今回から調査に追加されるに至った。しかし、今後は経年比較を可能にすべく、改定前年と改定年の2年分の決算データを調査することを提案するとした。 さらに、実調は、医業収益の伸び率だけ見ても、全国のデータを示す「メディアス」(厚生労働省「最近の医療費の動向」)の傾向とは大きな乖離があり、違和感があるとして、経年比較に耐えうるものではなく、単年度のカテゴリ別の分析により比較を行ったとした。 (2)では、国公立病院は赤字で、地域の中核医療やへき地医療を担うなど、経営困難な状況にあることも事実であるが、一方で、国公立病院の看護職員の給与は民間個人病院の1.2〜1.4倍、事務職員の給与は1.8〜2.0倍であると指摘。国公立病院においても、民間病院と同じような経営努力は不可欠であるとした。 (3)では、実調においては、損益分岐点比率は一般病院105.2%(医療法人は96.6%)、一般診療所(医療法人)93.8%、また、日医が「TKC医業経営指標」を基に計算したところ、2008年度の損益分岐点比率は病院94.9%、診療所95.0%であったとし、病院だけではなく、診療所の経営も危機的状態にあることは明らかであるとした。 (4)では、実調の発表後、経営者である院長(病院長)と病院勤務医の給与に注目が集まっているが、院長には経営責任があることを考慮すべきであり、これまでも日医が主張してきたとおり、他の職種等と比べて病院勤務医の給与が低いことに注目すべきであるとした。 最後に、4日の中医協で意見が出された「ドクターフィー」についての記者からの質問に対して同常任理事は、「日本の診療報酬体系は、これに対応するものではなく、チーム医療に混乱をもたらすのではないか」との懸念を表明。医師の能力に応じた評価には一定の理解を示す一方、本来、個々の医師の評価は各医療機関が行うべきであり、それを可能にするような余裕を医療機関に与えるためにも、「医療機関のすべての経営原資である診療報酬の全体的な引き上げが必要である」と改めて強調した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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