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定例記者会見 「平成22年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」等に対する日本医師会の見解 ―中川常任理事 |
同常任理事は、まず、今回、改定率が入院、外来で区分されたことは、「外来の財源は外来で活用できることを示している」として、外来で捻出されたα億円が、入院に上乗せされることのないよう注視したいと述べた。そのうえで、日医の見解を公表した。 (1)「トリアージ」については、「実施基準が確立されておらず、責任の所在も明確化されていない。国民にトリアージの概念が浸透していない」として、診療報酬上の評価を導入することは時期尚早であり、反対であるとした。 (2)「救急病院等を受診した軽症患者の自己負担」については、「国民、患者の理解を得るための十分な議論が行われていない」、「行政等の取り組みも含め、総合的に検討していくべき」、「軽費医療の保険免責制導入への突破口になりかねず、公的医療保険の給付範囲を縮小しかねない」と問題点を指摘し、現段階で制度化し、促進することは時期尚早であり、検討が必要であるとした。 (3)「一般病棟入院基本料15対1の適正化」については、「信頼性に欠ける医療経済実態調査結果をもとに、適正化(引き下げ)されようとしている。地方では急性期を担っていても、看護職員不足から15対1を算定せざるを得ない病院もあり、その意味からも、反対である」とした。 (4)「夜勤72時間要件」については、日医の調査(2009年7月調査)では、1年前に比べ、看護職員の採用がさらに困難になった病院が61.0%あったことや、看護職員不足のため、病床数の削減、病棟の閉鎖などで対応してきた病院も少なくないとして、大幅に緩和すべきと主張した。 (5)「有床診療所」については、「全体的な引き上げを行ったうえで、1)入院期間14日以内、2)長期入院患者、を適切に評価する必要がある。いずれも財政中立的な評価は認められず、あくまで全体的な引き上げが前提である」と強調した。 (6)「医療・介護職種の連携」については、「病院医師とケアマネージャーではなく、退院後におけるかかりつけの医師とケアマネージャーを含む多職種との共同指導等のほうがはるかに重要であるとして、今回の提案は、いたずらに早期退院を促し、患者を医療から締め出すことになりかねない」として反対とした。 (7)「再診料」については、病院の再診料を引き上げて、診療所の再診料に統一していく方向には賛成であるとしたうえで、「今回の改定では病院の再診料引き上げ幅をある程度多くして診療所の再診料に近づけること、そして次回以降、より高い水準で統一すること」をあらためて提案すると述べた。 (8)「外来管理加算」については、「5分要件は撤廃すべき。また、5分要件の撤廃を機に、加算そのものを廃止するという方向に反対である」と主張。外来管理加算のあり方については、次回改定にむけて時間をかけて議論すべきと考えるとした。 (9)「療養病棟入院基本料」については、「適正化」が引き下げを意味しているのであれば反対としたうえで、「療養病床は、急性期医療の貴重な受け皿である。中長期的計画の下で療養病床を維持していくべきであり、むしろ評価は手厚くされるべきである」と述べた。 (10)「検査、処置及び手術等」については、信頼性に欠ける医療経済実態調査のデータをもとにした、行政刷新会議の事業仕分けでの指摘をそのまま踏まえ、特定の診療科の適正化(引き下げ)を行うことは認められないとした。そのうえで、「診療行為の実態をしっかりと踏まえて、冷静に検討していくべきである。また厚生労働省は、医療経済実態調査以外に、診療行為について把握しているエビデンスを開示し、議論に資するべきである」と指摘した。 同常任理事は、日医の見解をパブリックコメントとして提出する予定であることも報告した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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