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定例記者会見 「医行為の範囲の明確化(診療看護師資格の新設)に対する日医の見解を公表」 ―羽生田副会長 |
15日開催の行政刷新会議において了承された「規制・制度改革に関する分科会第一次報告書」の中に、規制改革事項の一つとして、「医行為の範囲の明確化(診療看護師資格の新設)」という項目がある。同報告書の対処方針として、「『特定看護師(仮称)』制度化に向けたモデル事業を早急に実施するとともに、特定看護師の業務範囲、自律的な判断が可能な範囲等について並行して検討」とあり、ワーキンググループの基本的考え方のなかには、「将来的には、看護師の一類型としての『特定看護師』ではなく、医師でも看護師でもない『診療看護師(仮称)』の新設を目的として検討を行う」との記述もある。 しかし現在、看護師の業務は、保健師助産師看護師法(保助看法)第5条で、「療養上の世話」と「診療の補助」の2つしか規定されておらず、個々の医行為が「診療の補助」の範囲に含まれるかは、難易度、看護教育の程度や社会通念等、状況に応じて、厚生労働省が局長通達により見解を明らかにしてきている。最近では、「静脈注射(平成14年)」や「薬剤の投与量の調節(平成19年)」等が、「診療の補助」の範囲に含まれることが示されている。 これらを踏まえ、同副会長は、(1)医行為は人体に侵襲を及ぼす行為であり、診断と治療は医師の業務である。医療は、不確実性が高く、常に重症化や急変のリスクを内包している。特に、診察、治療等の医行為は、高度な医学的判断および技術を有する、有資格者(医師)によって行われなければ患者にとって不利益となる結果やリスクをもたらすおそれがある。(2)医師不足だからといって、新たな職種をつくることには慎重であるべきで、役割分担だけが十分な議論もなく拡大されると、責任の所在が曖昧になるおそれがある。(3)現状では看護師等の専門知識が医療現場で十分に活かされておらず、現行の保助看法の下で、「診療の補助」の範囲を拡大し、看護師等を活用することが重要であり、医療安全の確保の観点が不可欠である―という日医の見解を改めて示した。 そのうえで、勤務医の過重労働緩和、ひいては医療の質の向上という観点から、現行の保助看法の下で看護師の「診療の補助」行為を拡大していくことには賛成であるとする一方、「診療看護師(仮称)」については、定義がはっきりせず、具体的に何を業務とするのかも明らかでないと指摘。 また、「特定看護師(仮称)」や「診療看護師(仮称)」が新しい職種として出来る行為が規定され業務独占となった途端に、現在全国でチーム医療の中で看護師が行っている業務が出来なくなり、むしろ看護師の業務縮小が起きて、地域のチーム医療が崩壊することに懸念を示した。 さらに、同副会長は、「特定看護師(仮称)」制度化に向けた実態調査については、「『特定看護師(仮称)』に何をさせるかの調査ではなく、一般の看護師がどこまで安全に、診療の補助としてどういった医行為が出来るかの調査であると認識しており、そういった形で、今後も対応していきたい」との考えを示した。 ◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代) |
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