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定例記者会見 「新成長戦略」に対する日医の見解 ―中川副会長 |
中川俊男副会長は、6月23日の定例記者会見で、新内閣において6月18日に閣議決定された「新成長戦略」に対する日医の見解を公表した。同副会長は、「『新成長戦略』の冒頭には、わが国の経済政策が、公共事業と行き過ぎた市場原理主義という二つの政策で失敗したと記されている。菅内閣が『強い経済』、『強い財政』、『強い社会保障』の一体的な実現による新しい道を切り開こうということは、日医としても評価したい」と期待感を示すとともに、会長名で出された同文書を、関係省庁の政務三役、民主党の関係議員等に送付したことを明らかにした。
「新成長戦略」は、強い経済の実現に向けた戦略を示したものとして位置付けられているが、同副会長は、「日本医師会は、医療、介護への投資は雇用拡大、経済成長をもたらし、充実した社会保障を実現させ、そのためには安定財源の確保も避けては通れない課題であると認識している。今回、菅内閣が打ち出した方向性について、日本医師会は大変共感し、力強く感じている」としたうえで、「『新成長戦略』についても、しっかりと支援していきたい」と大枠で賛成の姿勢を示した。しかし、そのなかには国民皆保険に影響を与えかねない問題や、医療現場の混乱を招きかねない問題が含まれていると述べた。
まず、「医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等」では、「先進医療の評価・確認手続きの簡素化」とあることに触れ、「簡素化」が意味しているところが、「事後チェック」であるとすれば問題だと指摘。医療における事後チェックは、問題が起きた時に手遅れになるだけでなく、一体不可分の公的医療保険の信頼性も損なわれてしまうと指摘した。
また、先進医療などの保険外併用療養は、自己負担可能な一部の患者への提供に止まるとして、「保険外給付に目を向ける前に、いかに、現在の国民皆保険を拡充するかを考えていただきたい」と要請。安全性、有効性が確認された普遍性のある医療は速やかに公的医療保険に収載すべきであり、保険収載までの審査プロセス等に係る必要な人材および財源を確保することが重要であるとした。そして、保険収載までの期間は評価療養を有効活用することを提案した。
「国際医療交流(外国人患者の受入れ)」では、海外の需要に注目する前に、日本人患者を守ることを最優先課題とすることを求め、「人道的見地からも不都合な規制は緩和すべきであると考えるが、営利の追求を目的にした組織が医療ツーリズムに参入することによって、医療の質が担保できなくなるだけではなく、混合診療の全面解禁が後押しされ、公的医療保険の保険給付範囲を縮小させる恐れがある」と強調した。
このほか、(1)2013年度までにOECD平均並み実働医師数の確保、(2)2020年までに平均在院日数(19日)の縮減、(3)2013年度までに「どこでもMY病院」の実現、(4)「国際戦略総合特区(仮称)」「地域活性化総合特区(仮称)」―における問題点を指摘し、これらの項目について医療現場の実情と医療関係者の意見を踏まえたうえで、改めて検討することを要望した。
◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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