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定例記者会見 「医療産業研究会報告書に懸念を表明」 ―中川副会長 |
中川俊男副会長は、6月29日の一部一般紙の報道、「経済産業省が、『医療ツーリズム』の拡大に向け、患者受け入れを支援する新会社を2011年に官民出資で設立する方針を固めた」で取り上げられた「医療産業研究会」の報告書が30日に経産省から公表されたことを受け、同日の定例記者会見で、同報告書には非常に問題が多いとしたうえで日医の見解を述べた。
同副会長は、まず、同報告書の最大の問題点は、副題に「国民皆保険制度の維持・改善に向けて」とあるにもかかわらず、地域医療の崩壊を見過ごし、公的医療保険に依存しない民間市場を拡大しようとしている点であると指摘した。
そのうえで、「同報告書では、『今日の日本の医療制度における課題は、およそ医療に関わる全てのニーズに、財源的にも制約がある診療報酬体系という手段のみで対応しようとする点にあるのではないか』と、公的医療保険に限界があるとしているが、診療報酬は財源的な制約を持って決められることが間違いであって、本来、必要な医療には必要な財源を充当することを考えるべき。あるべきは国民皆保険の堅持であり、そのために、現行の医療制度や診療報酬上の課題を解決していかなければならない」と主張した。また、「現在の診療報酬のメニューにQOLの維持という視点は存在しない」との表記について、「まったくの事実誤認。中医協では、患者一人ひとりの心身の特性や生活の質に配慮した医療の実現にむけて、診療報酬改定が行われている」と述べた。
「外国人患者の受け入れ」については、まさに「医療ツーリズム」のことであると指摘。「外国人患者、顧客の受け入れに必要な能力を有する医療機関を認証し、必要な規制緩和を検討すべきである」としている点についても、「医療崩壊のさなか、国が特定の医療機関にお墨付きを与えて、その経営を支援するようなことをすべきではない。いわゆる『勝ち組』医療機関が、自由価格の富裕層を受け入れて経営改善を図る一方で、そうではない医療機関では診療報酬は上がらず、『勝ち組』医療機関に医師が引き抜かれる。医療ツーリズムで獲得された資金は、『勝ち組』医療機関と、その周辺産業にしか還元されず、地方の医療機関は切り捨てられ、地域住民は路頭に迷う」との危惧を示した。
同副会長は、「日医は、所得によって受けられる医療に格差がつき、公的医療保険の給付範囲が縮小する流れには断固として反対し、国民皆保険を全力で堅持する」と述べ、政府与党に直接働き掛けていくとともに国民にも理解いただくよう努め、国民が本当に求めている医療を追求していくとした。
なお、会見に同席した横倉義武副会長は、「このような重要な問題については、都道府県医師会及び郡市区医師会に連絡し、各地域でも働き掛けをしてもらう」と述べ、全医師会が一致団結して取り組む姿勢を示すとともに、「このままいくと、皆保険制度は壊れる」との危機感を表明した。
◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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