白クマ
日医白クマ通信 No.1306
2010年8月4日(水)


第1回医療政策会議
会長諮問は「医療を産業化していいのか」

第1回医療政策会議


 日本医師会の3大会議の1つである、医療政策会議の今期第1回目の会合が7月23日、日医会館で開催された。

 中川俊男副会長の司会で開会。冒頭、あいさつに立った原中勝征会長は、「民主党政権になって一度は消えたかと思われていた混合診療、あるいは医療を産業とする考え方が、経済状態の悪化を背景に台頭してきた。民主党に強く抗議したところ、この文言は消えたが、内容は残っている。私たちはすべてに異を唱えるつもりはないが、現場の意見を無視して一方的に突き進まれると、反対しなければいけないところがある」と述べ、国際社会におけるわが国の経済力を勘案しつつも、医師会として医療を通じて国民の生活と生命を守るべく活動していくことを強調し、本会議における意見を柔軟に聞いていくとの姿勢を示した。

 その後、議長に田中滋慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授、副議長に井戸俊夫岡山県医師会長を指名し、田中議長に諮問「医療を産業化していいのか」を手交した。

 なお、当日は、日医の定例記者会見配布資料も示され、混合診療や医療ツーリズムに対し、国民皆保険を崩壊させる恐れがあるとして反論していることが紹介された。

 議事は自由討議とされ、各委員から、「医療の産業化」について、「医療・介護・保育・教育は市場から外し、支払能力ではなく、必要に応じて利用出来る社会をつくるべきだ。医療は所得再分配効果が大きく潜在需要があるので、これを拡張するとマクロ経済にはよい傾向が出る」「小泉時代の社会保障改革という名の下での社会保障崩壊に対する反省の念が社会的に広がったのは喜ばしいが、日本経済が陥った停滞状況を打破する特効薬として、医療・介護を持ち出すのは危ない」「経済産業省の定義による医療の産業化とは、公費を追加投入せず自立的に成長するという産業化で、明記されていないが混合診療的なものだ」「医療は重点集約化と均てん化のバランスが求められる」などの意見が出された。

 また、混合診療の原則解禁については、「社会保障改革より、まず財政再建が優先されるので、医療費の増加を私費で賄おうとする動きは今後も強まる」との見方も示された。

 社会保障の充実のためには、財源論も避けては通れないことから、消費税についても言及されたが、委員からは、「税制改革に際し、医療費の自己負担、学費、保育費など、現在、税外負担として利用者が支払っているサービスを公的に供給するための増税であることを強調し、国民負担の概念を変える必要がある」として、アメリカのように国民負担は低いが、税外負担が高いために負担能力に応じてサービスを購入する社会を目指すのか、税負担を上げて基本的な社会サービスを公的に供給するヨーロッパモデルを目指すのか、公の制度のあり方に対する根本的な問題提起もなされた。

 なお、本会議は今年度、来年度ともに、年5回の開催を予定している。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03−3946−2121(代)


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